番外編 デルグとヘク
だいぶ前に出した新人騎士の二人です。
覚えていなくても楽しめ……る?ような内容になっております。
今日、俺は騎士団に入団した。
と言っても、新人として基礎訓練の日々が続くんだけど。
初日の今日はいろいろな決め事をしていく日となっていて、現在の志望配属先、訓練の組等のことを決めていく。
俺は家が家なので、ある程度の結果を残し、王都……というか王宮勤務にならなければならない。お祖父様や父上様に顔向けできないから。
それと同時に、入団試験の主席と次席が発表された。俺のような貴族の兵役義務入団者は試験免除のようなものなのでこれには含まれない。
「えーと、今回の入団試験の主席、および次席の発表をする。主席、コレン・セルドラ。次席、ヘク・ゲデナ」
教官がそれぞれの名前を呼び、立たせた。
主席の方は、貴族らしい身なり、それにセルドラという苗字は聞いたことがある。俺みたいな家柄の間ではそれなりに有名な貴族だ。
もう一人の、次席の奴は……平民だ。
まさか次席で平民が呼ばれるとは思ってもいなかった。ある程度家やらが絡むと思っていたが、こいつはそれで誤魔化しきれない成績だったのだろうか。
教官は誉め言葉のようなことを言うと、二人を座らせ別の話に戻る。
「次は宿舎の部屋割についてだ、ひとまずはこちらで決めたが、希望があれば申し出ろ」
壁に貼り付けられた部屋割表を見る。人が群がっていて見づらいが、少し探すと自分の名前が見つかった。
同室は……さっきの主席、コレン・セルドラだ。なんとなく騎士団の思惑を感じる。貴族は貴族同士の部屋割になっているようで、相手の名前を呼んで同室の相手を確かめている。
俺はさっき立っていた主席の顔を思い出す。当然だという感じの顔、気に入らないと正直見た瞬間思った。こいつと同室かよ、嘘だろ。
変更を申し出たい。でも知り合いが誰もいない。知り合いはみんな他の時期に入団してたり年下で来年入団予定だったりで申し出ようにも申し出たい相手がいない。
たぶん申し出があれば入れ換えるんだろうけど、まあこいつと一緒になる奴は可哀想だな、俺のことだけど。
うわー、最悪だ。第一印象的に合わないなと思った奴と同室かよ。
「デルグ君?」
主席……コレン・セルドラが話しかけてきた。
「君あの名家の人なんだよね。やっぱり似合うってことかな、主席だし」
……やっぱり気に入らない。なんか、ことごとく自慢に聞こえて仕方ない。同室なんていらない。一人部屋を希望する。
「まあな」
「俺の家もそっちほどじゃないけど名家なんだぜ。知ってる?」
知ってるよ。馴れ馴れしい、気安くさわるんじゃねーよ。
ああ、もうすでに限界を感じる。俺はこういう奴が嫌いだ。家を自慢したりしてくるような奴。俺の家はもちろん自慢できるくらいの家だ。だが、それは俺の力じゃないことはわかってる。家に見合うくらいの力を身に付けるのは大変だった。家を自慢するだけの奴は何か大きな勘違いをしている、そうに違いない。
「俺はあんまり家柄とか気にしていないからな。でもセルドラ家は知ってる」
とたんに嬉しそうになるコレン、今のはお前の家を、家の功績を誉めただけだ、お前なんか誰が誉めるかよ。
ふと、次席の平民……ヘクの方を見た。
意外なことに、同室は貴族だ。なぜだろうと思ったが、多分二人部屋しかなくて、貴族と平民が奇数だったから次席のヘクなら貴族と同室にしてもいいだろう、みたいな感じか。
ヘクの同室になった貴族はなんとなく不満そうだ。なにやらぶつぶつ言っている。
俺は気になって少し近付く。大方平民のヘクは言い返すことができないから好き勝手言われているんだろう。これは使えるか?
もちろんコレンは放っておく。知り合いでもいたのか、と言ってくるが無視だ無視。
それとなく近付くと、ぶつぶつ言っている内容が聞き取れた。
「いくら次席とはいえよ、同室はないだろ。いい気になるなよ」
……さすがに呆れた。聞いている限り、これとほぼ同じ内容を延々と言い続けていた。ヘクは何も言い返さずうつむいたままだ。
「言いすぎだろ。やめろよ見苦しい」
俺は心底呆れたように言ってやる。だって本当に見苦しいから。
「なんだよ」
怒ったように言う男、部屋中の視線が集まっている気がした。
「何も言い返せないからって言っていいことと悪いことがあるだろ」
「関係ないだろ、お前には」
「そうだって、気にすることじゃないだろ」
茶々を入れてきたのはコレン、なんだここは、思想の凝り固まった貴族しかいないのか。
「じゃあ俺がこいつと同室になるよ。それでお前はコレンと同室になればいい」
似た者同士だろ、仲良くしろ。
「なっ、俺はそいつ以下ですか?」
驚いたようにヘクを指差すコレン、そうだ。性格的にもいろいろとヘク以下だろ。まあさすがにこんなこと言ったら大騒ぎになるから言わねーけど。
個人的に好きな二人(あんまり出てないけど)そのうち出す予定(。-∀-)




