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番外編 精霊院初日

今日から初の精霊院での勤務。慣れない、というかさすが王都、いろいろ綺麗に整ってて、お値段が怖くてそこらにあるものが触れない。

精霊が励ましてくれるからいいけど。

今向かっているのは新人精霊使の訓練場、火とか使うから精霊院とは離れたところにあるんだそう。

なぜ指導されるんだろう、と当初は思っていた。

ある程度精霊使いとしてやれるから精霊使になっているのに指導?

「じゃあ新人、二人一組で適当に組になれ」

はあ、よくわからんけどとりあえず近くにいた男に話しかける。

「組になってもらえませんか?」

「ああ、よろしく。何するんだろうな」

快く了承してもらえたので、私はその青年の横に立つ。

「俺はアル、アル・メセルソン。お前は?」

「レゲル・ゲナルダです」

私が名乗ると、先輩方がざわついた。

「おい、あいつか?」

「レゲラだかレゲルだったっけ、実技ダントツの」

「確かにすげーな、あれだろ、筆記は最悪だったのに実技で」

………何でしょうか。私なにかしましたっけ。

不審に思われたのか、他の新人精霊使が精霊になにかを訊ね、数人が声をあげる。

「えっマジか!?五体?」

「しかも上位?」

へぇ、そんなに珍しいんだ。

確かに普通一体か二体って聞いてたけど、別に私みたいなのは精霊院に行ったら他にいるだろうって思ってた。

私と組になったアルという青年も口が開いている。

「えーと、何をするんですか?」

場が収まらない気がするので、指導とやらの続きをしてください。

「あっ、ああ。じゃあ組はできたな?」

あたりを見てみると、みんな誰かしら組ができているようだった。

「じゃあ説明するぞ。まず精霊同士を戦わせたことはあるか?」

何人かがうなずき、残りは不思議そうな顔をする。もちろん私は後者だ。

「精霊使いは精霊使いにしか止められない。精霊使い同士の戦いに慣れるのがこの訓練の目的だ」

……そういうことか。他の精霊使いと戦うための訓練。

「マジか!」

横にいたアルは頭を抱えている。そしてそれを可哀想なものを見る目で見る他の精霊使。

「ありゃ負け決定だろ」

「相手が悪い」

うーん、どうすればいいんだか。まるで私が悪者みたいなんだけど。

先輩方もどうすればいいのか頭を悩ましているようだ。

「じゃあ初戦はレゲルと……お前は……」

「アルです……」

「んじゃ、レゲル対アル」

とっとと終わらせよう。そう思ったに違いない。

でも精霊使い同士で戦うなんて初めてだし、そんなに差が出るのかな。

先輩はアルの肩をぽんぽん叩き、何か言っている。頑張れっていう言葉が聞こえた。みんなアルの応援に回るらしい。

寂しい、寂しすぎる。私はなにもしていないのに!

そういうわけで、先輩から布切れが渡された。頭に巻いて、先に落とされたり取られたりしたほうが負けだとか。

「特別なルールは特にない。殺したりしなけりゃ問題無しだ」

私は向かい合っているアルを見た。そんな負け戦確定みたいな顔をするな。ほんとに私が悪者みたいだから。

「じゃあ、始め!」

そう先輩が言って少しして、アルの布切れがふわりと宙に浮き、私の手におさまる。

「…………」

沈黙。私もアルも全く動いていない。

直前に精霊達が、

『あの者の頭の布切れを奪えばよいのですね』

と聞いてきたので、殺したりせず、できることなら傷付けないように、先輩が開始の合図をしてから、と答えた。

そしたら、先輩の合図と同時にアルの精霊を精霊二体がかりで捕まえて、風精霊が私の手元に布切れを飛ばした……ということだ。

私、なにもしてない。それどころか私の精霊は五体いるから、二体は暇そうにしてた。

「えーと、レゲルの勝ち……」

先輩はもう何も言えない。

アル含むみんなぼんやりしてるし、次に進んでいかない。

はっとした先輩が次の試合の指示を出したので、私とアルはようやくみんなの中心から離れることができた。



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