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年末年始と地元5

町は年末だからか賑わっている。

年末年始の飾り付けとかお祝いの食材が店頭にいっぱい並び、年末年始のムードを醸し出している。

「ミゼルはどこに行きたい?ルナのとことか?」

ミゼルは首を振って言う。

「ルナおねーちゃんのお店は毎日行ってるからいいの。アレスおにーちゃんのとこに行きたい」

「どうして?」

アレスがいるのは鍛冶屋だ。女の子が好きそうなものはない気がするけど。

「オルトおにーちゃんのお店もルラおねーちゃんのお店もみんな行ったことあるもん。アレスおにーちゃんのお店だけ危ないからって連れてってもらってないの」

火とかいろいろ危ないもんな。まあ私もいるしいいか。ちょうどナイフとか買い換えようと思ってたし。

「じゃあアレスのところに行こうか。手を離しちゃだめだよ」

道は結構混んでてはぐれたらすぐには見つけられないからしっかり手を繋いでおかないと。みんなに守るって宣言してるし。

私は教えてもらった場所を頭の中で確認しながらミゼルの手を引いて歩いた。



少し歩くと、金臭い臭いが鼻をついた。

鍛冶屋らしい門構えのお店も見える。

ハセ区みたいな小さい区に鍛冶屋なんてそう何軒もないだろう。ここで間違いなさそうだ。

ちらりと中を覗くと、何本もの剣やナイフ、端には包丁も並んだお店になっていた。

その横の建物からはもうもうと煙が上がり、金臭い。

店員らしき女性が私に気付いて声をかけてきた。

「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」

女性はちらりと私と手を繋いでいるミゼルを見た。鍛冶屋に子供連れが何の用だろうといった感じだ。

「ここで見習いをしているアレスの兄です。久しぶりに戻ってきたので働いている様子を見せていただけたらと思いまして」

「えっ!?アレス君のお兄さん?第二宰相様の補佐官のレゲル様!?」

有名なのかな。まあハセ区出身で宰相様の補佐官になった人ってまだ聞いたことないし。それなりに知られてるのか。

「そうですが……今は家族で過ごすために戻ってきたので、様付けは必要ありませんよ」

そう言っても女性はおろおろしてて聞いているのかいないのかわからない。とりあえずアレスが働いてるとこを見せてもらえたらそれでいいんだけど。

「ちょっと待ってていただけますか?主人を呼んできます」

そう言って慌てた様子で店の奥に行ってしまった。鍛冶屋の親方の奥さんなのかな。そんな感じがする。

その間に商品を眺めることにした。

ナイフは結構普通のものばかり並んでいる。ここらで細工してあるようなナイフなんて売れないもんな。まあこういうシンプルなナイフを探してたから何本か買っていこうかな。どうせならアレスの打ったナイフがいいけど、打たせてもらえてるのかな。

値段はもちろんピンから錐まで。品質は値段に比例してるけどまあそういうものだろう。

そんなことを考えているとさっきの女性がおじさんとアレスを連れて戻ってきた。

お店の奥の方からの視線もちらほら感じる。仕事に戻れ。

「あんたがこいつの兄貴の補佐官様かい?」

無精髭を生やした恰幅のいいおじさん。作業服には油とかが染み付いてていかにも鍛冶屋ですって感じだ。

「ええ、久しぶりにこちらに戻ってきたので弟の仕事を見ていこうかなと」

「ふーん、そうかい。ならこっちからじゃなくてあっちの建物の方から入ってきてくれ。そっちの嬢ちゃんは危ないから待ってるか?」

子供が好きなのか、私に話している時よりいくらか表情が柔らかい。

「ううん、アレスおにーちゃんの働いてるとこ見るの」

「そうか、汚れたのでよけりゃ服貸すぜ」

そう言い残して鍛冶屋のおじさんはまた店の奥に戻っていく。

「俺ちゃんと働いてるからな!」

アレスはそう言っておじさんのあとについて行ってしまった。

私は教えてもらった通りに横の建物に入る。

入った瞬間冬なのにむわっと金臭い熱気がやってきた。

私はたまらず氷精霊に頼んで身体を冷やしてもらう。冬なのにこんなことを頼むことになるとは。

ミゼルも同じように冷やしてもらいながらさらに強い熱気が立ち込める作業場に私たちは足を踏み入れた。

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