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ハンカチ2

イノグレの店内は、壁一面大量の布だらけだった。

もっとさっぱりした店内を想像していたけどだいぶ違う。

まあカーテンとかタオルとかそういう布製品を扱っているなら、布が分かりやすいようになっててもおかしくないか。

「ようこそお越しくださいました。ご用件はなんですか?」

お店の人が声をかけてきた。これだけ店内が布だらけだったらハンカチの場所なんてわからないからいいんだけど。

「ハンカチを探しに来たのですが、どこに……」

「ハンカチでしたらこちらに、ご案内します」

私は店員の後について店の隅の方へ向かった。

そこには箱に入れられた何種類ものハンカチがあり、こんなにあるのかと正直あきれた。

そんな私の様子を察知したのか、店員は真ん中の方にあった箱を手に取った。

「プレゼントでしたらこのようなものがオススメです。女性への贈り物ですか?」

「ええ、まあそうです。ある方にハンカチをお借りしたので新しいものをお返ししようかと。このお店の印がついていたので」

店員は一度私の顔を見た。

そしてじっと考え込むようにして尋ねてきた。

「失礼ですが、あの、レゲル様でしょうか……補佐官の」

どこかで会ったかな。今はまあこういうお店に行くからってことでそれらしい格好をしてるしなぁ。式典とかで見られたのかもしれない。

「はい」

「うわぁ……」

そしてその声が聴こえたらしい数名の店員が振り向いて私の方を見る。違うって言った方がよかったかな。

「ですがこれは女性への贈り物ではなく、お借りしたものを返すだけですよ」

私は店員の持っていた箱を受け取って模様を見てみる。

フェターシャ嬢に借りたのと同じ薄いピンクのハンカチに可愛らしい黄色の花が刺繍されている。

値段は書かれていない。まあそういう物なんだろう。

「せっかくオススメしていただいたのでこれをいただきます。私一人では決められなかったでしょうし、ありがとうございます」

変なものをうっかり選んでしまうよりはそのお店の店員のオススメを買うのが無難だろう。

「いえ、そんな……」

「このハンカチの値段はおいくらですか?」

私は教えてもらった金額を払って、それを可愛らしく包んでもらう。

お金は足りた。思っていたよりはしなかったけど、普段だったらこんな高いものは買わない。

なんでこんな布一枚に貴族やお金持ちはほいほいお金をかけられるのだろう。

私には到底理解できないことだった。



数日後、仕事が午前中に片付いたので私は時間のあるうちにと思いフーレントース家に向かった。

さすがと言うべきか、フーレントース家の屋敷は物凄く大きかった。

考えた末、直に返した方がいいという結論に至りここに来たわけだが、通してもらえるかが不安だ。

念のために手紙を持ってきてはいる。

いなかったり門前払いされる可能性があるからだ。

使用人っぽい人に頼んで入れてもらえるかを尋ねてもらう。

少し待つと、使用人が戻ってきて中に通された。

フェターシャ嬢は在宅で、部屋に入れてくれとのこと。

私は使用人にフェターシャ嬢の部屋まで案内された。

男じゃないけど、一応男の私を未婚の娘の部屋に通してもいいのかと思ったが、部屋にメイドとか他に人がいるだろうからいいかな。

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