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ハンカチ

昨日の夜は帰ってきてすぐざっとお湯を浴びて寝た。

案の定、朝起きたら胃の辺りが重く、胸の辺りがもやもやする。慣れないものをたくさん食べたせいだな。

この前の殿下との食事の店は肉も魚も出たけど、どちらかというと野菜がメインでこうはならなかった。

私は植物精霊に胃に効く薬草を尋ねた。

『それでしたら……この辺りならモル草が生えています。乾かしてお茶にするといいですよ』

私は植物精霊に採りに行ってもらった。ちょっと時間がないし、お腹も減ってないからそのお茶だけでいいかな。

意気揚々と戻ってきた植物精霊は花壇でよく見かける薄黄色の花を持って戻ってきた。結構身近に薬草って生えてるんだな。

そう思いながら光精霊と火精霊にその葉を乾燥してもらい、ポットにお湯を用意してお茶を淹れる用意をした。



私は道を歩きながらお腹をさすった。

先ほどより少し軽くなった胃に、だいぶゆすいだのにまだ口の中に若干残るえぐみと苦味。

モル草の薬茶はものすごく不味かった。

色は若干濃いかなってくらいの茶色、匂いもそんなになかった。

一口飲んで、私は思わず口を押さえた。なんとも言えない苦味、精霊が失敗したわけでもないのに香ばしいを通り越した焦げた味。

こっちの方が胃に悪いんじゃないかと思ったけど、植物精霊が言うくらいだから効くんだろう、そう思い砂糖を入れてなんとかコップ一杯飲み終えた。



仕事中、報告書のある一文に目が釘付けになる。

『ネイデル領ハセ区に出現した魔物二体により、騎士、ユサ・ケルデス死亡。他二名重傷、三名軽症。区民数十名軽症』

ハセ区は私のいた街だ。今も妹と弟が住んでいる。

でもあんなところにこれほどの被害を出す魔物が出るとは……

ハセ区は農業と商業で成り立っている区だが、儲かっているわけでもない、むしろ貧乏な区だ。

土もやせていて魔物が住めそうな森もなく、不思議でならない。

魔物は仕留められたからいいが、原因をある程度調べる必要がありそうだ。

とりあえず処理済みの印鑑だけ捺しておき、手帳の隅に小さくメモしておいた。



仕事が終わって、私は普段行かない方面へ足を向けた。

昨日ナルシア様に教えてもらったお店……確かイノグレに行くためだ。

一応手持ちのお金を確認する。

足りるかな、そういうのは一切買ったことがないから相場なんて知らないし、そもそもまだ貴族の金銭感覚を理解していない。

そうしているうちにサート通りに到着してしまった。

昨日カーレル様の屋敷に行く途中にあったブティック街と雰囲気はよく似ていた。

何て言うのか、貧乏人は帰れと言わんばかりの雰囲気。

明らかに高級そうな店構えに、道路の石畳からして他と違う。

「……精霊多いなぁ」

この通りに来た瞬間、見えてた精霊の数が一気に増えた。

気に入った人間が見つからない限り精霊は長年同じところにいるようで、初めて会う精霊ばかりだ。

精霊の雰囲気もなぜか高級って感じがする。

寄ってきた精霊を適当にあしらいつつ、私は前方に見えてきた『イノグレ』っていうお店に入った。

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