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訪問者5

王宮を出てすぐのところに待機していた馬車に乗り込むと、カーレル様の指示も待たず馬車は緩やかに動き出した。

昨日のおパーティーで殿下に用意されたものほどではないが、しっかりした造りで、椅子のクッションも柔らかく、長時間乗っていてもこれなら平気だろう。

「どれくらいかかりますか?」

「そう時間はかかりませんよ。王都内ですからすぐ着きます」

馬車の質がいいのと、しっかりと整備された道だからか、馬車は全く揺れることなく進んでいく。

夕方なので王都の全体的に白っぽい街並みは太陽の光を浴びてオレンジ色に染まっていた。

この辺りは高級ブティックや貴金属店、家具屋などの貴族御用達の店の並ぶ商店街で、一般人は近づかない場所だ。

所々に貴族のものらしき馬車が停められていて、その店の中に人影が見えた。

私はこんなお高いお店に用はないから滅多に通らないけど、王都にはここ以外にもこんな感じに高級ブランド店の立ち並ぶ商店街がいくつかあるようだ。

「レゲルは今日は泊まっていくのか?」

ティグルスが不意にそんなことを言った。

「いえ、少しお邪魔させてもらって帰るつもりです」

「そうか」

ティグルスはそう言ったきり黙ってしまった。何が言いたかったのだろう。

「もうじき着きますよ。レゲル君は初めて来ますよね」

カーレル様は窓の外を指した。見ると塀で囲まれた立派な屋敷が見える。王都内にある邸宅としては大きい方だろう。

貴族の家は普通は各領主の治める領地に一番大きなものがある。王都にあるのは小さな屋敷で、王都でパーティーなどに呼ばれたときの宿泊用として使われることが多いが、王都に屋敷が持てるのは中流以上の貴族で、下級貴族は王都内のホテルに宿泊する場合が多い。

カーレル様のタルシューグ家は上流貴族かつ、奥様が現王妃様のいとこというだけあって王都内の屋敷は大きい方に入る。

ちなみにタルシューグ家の領地ケラセレ区は王都の南西にある大きな領土で、大きな湖とそこから発展した農業で豊かな領地となっている。漁業と工業も盛んで領地内の街には様々な店が軒を連ねているという。

ケラセレ領主であるカーレル様の兄君は王宮でのゴタゴタは次男のカーレル様にまかせる代わりに、王都の屋敷の権利などはほとんどカーレル様に譲って本人はのんびりと領土を治めているらしい。

そういえばまだケラセレ区はまだ行ったことないな。行かなくても兄がいるからみたいな感じで、カーレル様が実家に戻ったときが視察ということになっていたりで。

「……カーレル様はなぜ宰相になられたのです?ケラセレ区の兄上様の手伝いでも十分やっていけそうですが」

「それも考えなかったわけではないのですが、家の力に頼りきりになるのは気が引けましてね、自力で行けるところまで行ってみようと思ったんです」

今のカーレル様を見る限り、役人の試験にはあっさり受かったのだろう。頭はいいし仕事の効率もいいから宰相にまで登り詰めれたのも納得できる。

そう思ったとき、馬車は止まって馬車の扉が開いた。

御者の人に促されて馬車を降りると、そこは屋敷の中庭だった。

王都内の屋敷で馬車を止めれるくらいの中庭があるのはすごいことなんだろうな。上流貴族の財力って怖い。

屋敷の使用人に案内されて私は屋敷の中に入った。




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