神殿と噂5
相手が単なる精霊使いなら、私の精霊の個々の能力と数で5人相手くらいならどうにでもなる。
しかし今の状況、相手は神精霊使いの神官たちだ。今入ってきた5人に加え、目の前にいるのはそのトップである副神官長と、実力は確かなへリアル。
逃げようにもこの脚では歩くことすらままならない。
「おい、レネッタ!どういう事だこれ!?」
異変に気付いたアルが勢いよく扉を開けて入ってきた。そして部屋の状況に顔を引きつらせる。
「危ないから出てろ!」
水精霊に命じてアルを部屋の外に出す。部屋にいられて人質になられたら困る。それに、逃げるためにアルには無事でいてもらわなければならない。私が部屋の外に出られればいいのだ。
同時に神官たちを電撃や氷で足止めしようと指示を出すが、精霊たちの攻撃は神精霊の壁によって阻まれてしまう。
室内という狭い空間のため、守ることに徹されては不利だ。
中途半端な攻撃では防がれて終わってしまい、強すぎたら私も危険になる。炎や水は特にそうだ。
そうしている間に距離をジリジリ詰められていた。
……風精霊か。ここは。
風ならば燃えたりといった被害はないだろう。
小さい他の精霊の攻撃で距離を保ちつつ、準備を終えた風精霊が腕を大きく振る。
暴風が生まれて、神官たちの方へ吹いていく。
大きな攻撃を仕掛けてくるというのはわかっているはずだ。攻撃まで時間も開けたから、それなりに強固な壁で防御をするはず。それで力を消耗させればいい。
「なっ……!」
私の考えとは逆に事は進んだ。
風精霊が思い切り風を起こした途端、神官たちは自らを守っていた壁を消したのだ。
岩さえ吹き飛ばす勢いで発生した風が、生身の神官たちに襲いかかる。
狭い部屋でそんなものをまともに浴びればどうなるか。
神官たちは一瞬で吹き飛び、鈍い音を立てて壁に激突する。
骨が砕けるような音が聞こえた。
そして警備の騎士が血相を変えて飛び込んでくる。
「何事ですかっ!?」
そして部屋の惨状に顔を引きつらせた。
「これは……」
「あの女がやったんだ!何を呆けている!すぐあの補佐官を捕縛しろっ!」
ディーズ副神官長が私を指差し、唾を飛ばしながら叫ぶ。
困惑する騎士たちだったが、やがて呆然としている私に恐る恐るといった様子で近付いてきた。




