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日常は束の間5

毒の効果が薄れてきたのは、その日の夜になってからだった。

それまで意識は朦朧としていたものの、毒を吐き出すための苦い薬を飲まされたり、風精霊に空気を送ってもらったりしていた記憶はある。

それらの処置のおかげか、身体の痺れはなくなって、少しずつ呼吸が楽になってきていた。

起き上がることもできそうだけど、やめておく。今日のところは寝ていていいから、とおっしゃったときのカーレル様の目が、すごく怖かった。今思い出しても怖い。心配かけさせてしまったのは私なのだけど。

ゆっくり時間をかけて息を吐く。

とても静かだ。外は雨が降っているようで、屋根を叩く雨音が妙に大きく聞こえた。

この部屋はカーレル様の執務室の横にある小部屋の一つで、このところは宿舎に帰るのが面倒でここで寝泊まりしていた。元々休憩やちょっとした話し合いなどに使っていたとはいえ、最近は完全に私の部屋のようになっている。私が今寝ているベッドも、ソファで寝ていた私を見かねたカーレル様によりつい最近置かれたものだ。

あーあ。私、カーレル様には迷惑かけてばかりだな……

私が女だったとバレてしまった後のこと、ダルネミアにいた間のこと、ほとんど全てカーレル様が処理をしてくださっているのだ。一方私はそういう時、カーレル様の役に立ててはいない。私はカーレル様の補佐官なのに、宰相様の補佐ができない補佐官なんて、無能もいいとこだ。

それにあの飴の毒を誰が仕込んだのかは皆目見当がつかない。飴を置いていった使用人?いや、そんな単純なわけがない。飴に毒を塗るのではなく、中の蜜に混ぜるような手の込んだ事をしてくるくらいなのだから。

毒を盛られる心当たりはある。最近色々ありすぎたし、私がいると都合の悪いという人間はたくさんいるだろう。

ならせめて、あの噂の根源だけでも探りたい。こちらは、第2王子派の神官が怪しいというところまでわかっているのだ。あとは高位の神官の中から絞っていけばいい。

自分に関わる問題くらい、自力でどうにかしないと。

しかもこれは私だけの問題じゃなくて、上司であるカーレル様の名誉にも関わる。カーレル様の足は引っ張りたくない。

そうとくれば動かないと。

カーレル様は念のため明日も休むように言ってくださった。でも、今の身体の調子からして明日の朝にはとっくに良くなっているだろう。

明日、神殿に行き、神官たちに直接話を聞く。

出て行くところをカーレル様に見られたらなんと言われるかわかったものではないので、カーレル様が執務室にくる前にここを出ていたい。

となると、明日の朝は早いな。


日常は束の間はここで終わりです

また明日も1時間おきに更新していきます!

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