表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
256/276

王太子と精霊王3

「それならば、私と契約しないか」

不意にそんな言葉が口をついて出てきた。

レネッタの近くにいることができればいいのなら、契約相手が私でも構わないのではないか?お互い王宮内で働いているのだから、距離的にはそう遠くない。むしろ精霊王の方が会いに行きたければ行ける距離だろう。

それに、契約をすれば精霊王は力を使うことができる。この嵐を生み出しているのがこの精霊王ならば、力を借りることができれば、より早くダルネミアに向かうことができるのではないだろうか。

『なぜじゃ?そなたはあの者の近くにいる者なのか?』

興味を惹かれたのか、精霊王が私の方へぐっと詰め寄ってきた。

いや、近くにいる者と言われると少し違う気もするが、物理的に言えば近いと言えるので、まあそうだろう。

そう伝えると精霊王は微妙な顔をする。

『それは近いと言えるのかのぅ……?番っておるくらいかと思ったが』

「そこまで近くはない!」

思わず言ってしまい、しまったと思った。精霊の感覚というのはそういうものなのだろうが、どうも姿が人型をしているから調子が狂う。

『番えぬのか?』

しようと思えばできるだろうが、だからといって実際にできたとしても問題だろう。

『愛し子と番えるならば、妾なら消滅しても構わぬくらいじゃが……そなたは贅沢だのう』

論点がズレてきている気がするのだが、それなら私にどうしろと?まあ、レネッタと結婚するというのは悪くないと私個人は思っているが……

その考えが過ったのを、精霊王は見逃さなかった。

『ならばよいぞ。愛し子に契約を申し入れても聞き入れてもらえぬだろうし、そなたの近くならば愛し子がいるのだろう?』

心なしか、波が激しくなったような気がした。

精霊王はその半透明の手を私の方へ差し出してくる。

『妾の名はトルメーチェ。そなたは?』

精霊王の名が頭に響く。誰かに胸を押さえ付けられているような圧迫感に、息が詰まった。

精霊との契約に、このような負荷があっただろうか。

分不相応な契約ということなのかもしれない。ここで名前を言いさえしなければ、少なくともこの負荷はなくなる。

しかし、ここで止めてしまえばこんな機会は今後一切ないだろう。精霊王と契約した方が、レネッタを助けられる可能性が高くなるのだ。

私は自分の名前を精霊王に伝えた。精霊王はそれを反芻して、満足げに微笑む。

『では、主人殿。愛し子の元へ行きましょうか』

精霊王がそう言った瞬間に船の上にあった暗雲が霧散し、風が進行方向に強く吹き始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ