告白2
ノックの主はゼイドだった。
ゼイドは入ってくるなり言う。
「殿下、エルティナ様が……!」
「姉上がどうした?」
ゼイドはよほど慌てていたのか息を整えながら何やら手を動かし、やがて少し落ち着いたのか顔を上げる。
「エルティナ様が突然船に乗り込まれ、レネッタ様を甲板に呼ぶようにと仰っています。レネッタ様には申し訳ないのですが、出てきていただけますか」
「え、ええ。構いませんが」
ゼイドの様子からして断るのは可哀想な気がした。まあそれに、この船に乗っている人のほとんどがアリュの人間だ。何かしてくるという事もないだろう。
「手伝おうか」
出発までの間はほとんどリハビリをしていたから、いくらか立ったり杖ついて歩いたりはできるようになったけど、すごく遅い。王族の手を借りてもいいのだろうかと思いつつ、手を貸して貰えるならありがたいのでお願いした。急ぎっぽいし。
サグアノに支えられつつ甲板に向かう。視線が少々痛いけど仕方ない。
そして甲板に出ると、船首にエルティナ様が立っていた。なぜかアルとユアリスが一緒にいる。
エルティナ様は私の姿を見てこちらに駆け寄ってくる。
「ああ、申し訳ございません。こちらから部屋に伺うべきかと思ったのですが、証言してくださる方が多い方がよかったので……」
いや、何を仰っているのかわからないんですが。
喉ぐらいまで出かかったその言葉を飲み込んで、私はとりあえず大丈夫だと伝えた。
「用事はすぐに済みます。さあ、早く」
状況が全くわかっていない私とサグアノを尻目に、エルティナ様はアルとユアリスを手招きする。
「さあ、どうぞ。ついでにサグアノもどう?」
えっと、あ、まさか……いや、わざわざエルティナ様がそんなことをするわけが……ない、よね?
「姉上、これはどういう……」
弟であるサグアノも、わかっていない様子だった。
「あら、決まってるじゃない。告白よ告白。聞けばこの2人、もう想いは伝えたって言うじゃない」
興奮しているのか早口なダルネミアの言葉だったので、アルとユアリスはわからずぽかんとしていた。一方サグアノは、やれやれとため息をつく。
「まさか、この2人の恋路を助けるためにこのようなことを?」
「まあまあ、あなたもどうなの?」
「……もう、伝えましたよ」
サグアノがそう言うと、エルティナは少し驚いた顔をしながらも、やがて悪戯っぽく笑う。
「その様子じゃ、振られたの?」
「いえ、まだです……というかなぜ姉上に話さなくてはならないのですか」
「あらそう。まあいいわ」
エルティナ様はちらりとアルとユアリスの2人を見た。完全に置いていかれた様子の2人は、一瞬顔を見合わせ、そしてほとんど同時に言った。
返事を聞かせてほしい、と。




