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手紙と従者の告白4

「私はかつてカラルド殿下の従者でした。あの方が生まれてすぐに、決まったことです。当時病弱だったカラルド殿下に、神精霊使いである私が従者となったのはさほど不思議なことではありません。とにかく、私はカラルド殿下と非常に親しい間柄であったといえます。王族ということもあり、遊び相手は私だけでしたから。その3年後にサグアノ殿下がお生まれになってからも、それは変わりませんでした」

そこで一度ゼイドは話を止める。扉の方が気がかりなのか、ちらりとそちらを見て、やがて意を決したように話し始める。

「全てが変わったのは、私がサグアノ殿下の従者になってからです。その頃にはカラルド殿下も13歳ととうに健康になられましたから、私である必要がなくなったのでしょう。それよりも当時10歳という若さで精霊使いとなったサグアノ殿下が、精霊を正しく扱えるかの方が当時は重要でした。サグアノ殿下が契約した精霊は高位の精霊でしたから、暴走するのではと危ぶまれたのです。この国で精霊使いとなることは、同時に精霊王と関わるということですから、それはもう慎重に、そして性急にサグアノ殿下の周囲に状況は変わっていきました。サグアノ殿下の従者に変わるようにという命令が、殿下が精霊と契約したその日の夜に出されたくらいです。

そして翌日の朝から私はサグアノ殿下の従者として使えることになりました。カラルド殿下にその後お会いできたのはその10日後、王城ですれ違っただけです。ここまで話せば、レネッタ様なら気付かれたのではありませんか?」

突然話を振られて驚いたけど、たしかに途中でなんとなく、まさかとは思ったけど想像がついた。

「カラルド殿下は、サグアノにあなたを取られたと思った。そういうことですか」

こんな痴情の縺れみたいなことがこんなことに繋がるのだろうか。冗談だと思おうとしたけど、ゼイドは頷いて肯定した。

「もちろん、それだけが原因ではないのですが、このことがきっかけであるのは事実なのです」

ゼイドは話を続けた。

精霊使いとして成長する弟。

精霊使いになることすらできない兄。

精霊王に関係する事柄を教えられ、弟が離れていく。その差異は精霊使いか否か、その一点のみ。

決定的となったのは、父親でもある皇帝の言葉だった。

『サグアノに精霊王に関する権限を与えようと思う。カラルド……あやつは未だ病弱であった頃の気分でいる。臥せる理由もあるまいに、部屋から出てこないのではな。あやつに王族としての自覚というものはあるのか……3つ下のサグアノの方がよっぽどしっかりしておるぞ』

皇帝はそれを、事もあろうに本人がたまたま聞いている時にそう言ったのだ。

母親である妃の元に顔を出すつもりだったのだろうが、間が悪かった。

「カラルド殿下はそれ以降、変わってしまわれた。皇都に行っては歓楽街や娼館で遊びを覚え、ふらふら王城を出て行かれるのも当たり前でした。しかしそれについても皇帝陛下は引きこもりが放蕩息子になっただけだと、はじめは諌めこそしていましたが、やがて黙認するようになってしまい……」

そうして今に至る遊び人っぽいカラルド殿下となったわけか。

話し始めた時のカラルド殿下の感じが今の感じと全く違うから、何ががあったんだろうとは思っていたけど、まさかこんな理由だったとは。

「でもそれならば、サグアノはそれを知っていてもおかしくないのでは?」

それにゼイドが知っているということは、それなりに知られていることだ。それに、カラルドが遊び人になったことと、ゼイドを取られたことが今回のカラルドの謀反にまで繋がるのだろうか。

「いえ、皇帝陛下の言葉を知る者は多くありません。私はカラルド殿下に直接聞いたのです」

「直接ですか?」

「従者を取られた程度の事が、ここまでのことに繋がるとは誰も考えないでしょう。ですが、これらは全て繋がっています。どれ一つ欠けてもカラルド殿下はあそこまで追い詰められることはなかったはずなのです」

「確かにそうなのかもしれませんが、なぜそこでゼイドさんが責任を感じているんです?取られたことがきっかけだとしても、ゼイドさんにはどうしようもないことだったのでしょう?」

従者を変わるようにというのは皇帝の命令だろう。逆らうことなどできるはずがない。

「そう思うこともできるでしょう。ですが、私はそう思えないのです」



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