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事後報告3

ふっと目が覚めたので、使用人の女性、ネルとエーシャに頼んで上半身だけ起こしてもらう。

そして脇にあった水差しに手を伸ばしたときに気付いた。体が少し動くようになっている。水差しは気付いたエーシャが取って飲ませてくれたけど。正直手が届いても持てていなかっただろうから助かった。

「ありがとうございます」

久しぶりに声を出したのでなんだか掠れた声になってしまったしこちらの言葉でもなかったが、二人は微笑んで頷いてくれた。

「レネッタ様は私たちの、いえ、ダルネミア帝国の恩人です。お助けするのは当然のことです」

「はい。私の実家は皇都で商売をしているのですが、もしあの時溶岩が皇都に流れ込んでいれば、商売の再開どころか存続も危うかったのです。火山に近かったので……その恩をお返しするために、エルティナ様にお願いしてこの場にいるのですから」

「そう、だったんですね。ご実家が無事で何よりです」

よかった。直接私が溶岩の流れを変えたのではないけど、私のしたことに意味はあったんだ。

「そうでした、夕食は召し上がりますか?昼に召し上がった粥だけでは足りないでしょう」

確かにお腹は空いているというか、食べていなさすぎて空なのかすらわかりにくい。でも前に食べた粥はけっこう薄いのだったし、食べられるなら食べておいた方がいいよね。

「ではお願いします」

「はい」

粥の準備のため、エーシャが部屋を出ていった。

残ったネルは食事用の台の用意を始める。

しばらくして、コンコンと規則正しいノックの音が聞こえたので、エーシャが戻ってきたのかと思ったら、精霊たちが首を振った。

違うのか。じゃあ誰だろう。

精霊たちの反応的に、危害はなさそうなのでネルに扉を開けてもらう。

「レネッタさんは起きてるかしら?ああよかった」

そう言って入ってきたのはエルティナ様だった。

その後ろから、アルとユアリスが入ってくる。

二人は私の顔を見て、ホッとしたように息を吐いた。

「レネッタさんにお話があるそうですわ。レネッタさんのお知り合いですし何もないとは思いますが、私も同席させていただきます」

寝たきり状態の女性を男二人と一緒の部屋にするわけにはいかないそうだ。まあ確かにその通りか。エルティナ様はあまりサヴァ語が得意ではなさそうだから話を聞いておくとかいう意図はないのだろう。

ネルが椅子を勧めたが、すぐに出ていくからと二人はベッドの横に立つ。

「目が覚めたって聞いてきたんだけど、その……大丈夫か?いや、大丈夫じゃないのはわかってるんだが」

「本当によかったです。レルチェは落ち着きませんし、もしレネッタさんに何かあったらどうすればいいのか……」

よく見ると二人の目の下にはクマができていた。あまり眠れていなかったんだろう。もし二人のどちらかが私みたいになったら、きっと同じように眠れていない。

「心配かけてすまなかった。見ての通り目も覚めたし、もうしばらく休めば動けるようになる」

今は動かそうと思えばさすがに動かすことはできるけど、力を入れることができない感じだ。腕もまるで鉄でできてるみたいに重い。

「そうだ、レルチェは大丈夫?いくら大きくなったとはいえあんなに飛び回って……」

どういうわけか王太子殿下が乗ってきていたけど。というかそもそもなんで殿下はわざわざダルネミアまで?夜会で助けられた恩を返すため私を助けようとしたというのはさすがに理解してるけど、殿下がわざわざ単身で来る理由にはならないと思うんだけど。

まあそれは一旦おいておこう。今はレルチェの方が心配だ。

「レルチェならこの診療所の近くの屋敷の庭にいるよ。ダルネミアじゃ俺らが馬を飼う感覚で敷地内にドラゴンがいるみたいで、快く場所を貸してくれた」

「疲れてはいたけど大きな怪我もありませんし、2日も休ませたら元気になりました。安心してください」

「ああ、レネッタさんのドラゴンですか。とてもいい子ですね。レネッタさんを少し離れた林に下ろして守るようにしていたものですから、探していた者が近寄ることができず、そちらのユアリスさんに手伝っていただきました」

エルティナ様はレルチェをお気に召したのか、すごく褒めてくれる。竜の国と呼ばれるダルネミアの王女様だし、ドラゴンについては私なんかよりも詳しいんだろう。

ひとしきりドラゴンについて話し終えてから、慌てた様子で口を抑える。

「お話の途中でしたのにすみません。私、ドラゴンに乗ることが趣味なんです。ドラゴンの話題でしたのでつい……どちらかといえば男性の趣味で、先立った夫にもよい顔はされませんでしたね。兄達もあまり……」

先立った、ということはエルティナ様はこのお年で未亡人なんだ。まだ20代なのに。

それにしても、乗馬が趣味です、という感覚なんだろうけど、対象がドラゴンだし、お姫様なんだからという兄の気分はわからなくもない。

よく見たらエルティナ様のしているネックレスのモチーフはドラゴンの翼だった。私がそれを見ているのに気付き、エルティナ様は微笑んで「夫の形見ですの」と言った。

「ダルネミアの王女様に褒めていただけて光栄です。ですがレルチェを育てているのは私というよりそこにいるユアリスですが」

「ええ、存じております。失礼な言い方になるかもしれませんが、アリュにもよい飼育者がいるのですね。筋肉の付きもバランスも良いですし、鱗も美しいですわ。大切に育てられているのですね」

そう言いながらエルティナ様は目を輝かせている。本当にドラゴンがお好きなんだな。

「ですからレネッタさんとは一度お話をしてみたかったんですの。ドラゴンを飼っているアリュの女性だなんて初めて聞きましたもの」

「私もエルティナ様はドラゴンがお好きだなんて少し驚きました」

「初めて乗ったときの感動が忘れられませんでしたの。ああ、もっとお話したいけれど、お二人に悪いですものね。またお話しに来てもよろしくて?」

「横になっているときは特にすることもありませんし、問題ありませんよ」

どうせしばらくは横になって休んでいるだけの生活だろうし、むしろドラゴンを通じてダルネミアの王女様と仲良くなれるならそれもいい。というか楽しそうだ。

「嬉しいわ。兄は良い顔をしませんし、あまりお話できる相手がいませんの」

エルティナ様は心の底から嬉しそうにそう言い、再び話の邪魔をして申し訳ないと二人に謝って口を閉ざした。

そしてエルティナ様は私が二人と話をしている間、ずっと楽しそうに微笑んでいた。

またこの補佐官のお話と掠りもしない違うお話の設定がポーンと出てきて書きたい病にかかってしまいそうです……


とりあえず思いついた設定とかあらすじだけメモにまとめたら少しすっきりしたので、一応落ち着きました(´∀`*)ホッ

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