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噴火2

私と私の精霊たちは限界だった。レルチェも辛そうだし、諦めてどこかに降りようとした時、突然レルチェがしきりに威嚇するような低い唸り声を出し始めた。

火山灰のせいで何も見えない。まさか、野生のドラゴンでもいるのだろうか。ここはダルネミアだ。火山の噴火で出てきたということも十分に考えられる。

対抗する手段のないこの状況でできることは逃げる事はしかない。

レルチェに逃げるよう言いかけたとき、突然強風が吹き、視界が開けた。

何が起こったのかわからず、とりあえず溶岩に何かあったのかと下を見る。

地面が盛り上がり、壁のようになっていた。そして溶岩に向かって吹雪のような白い風がどこからか吹く。

私の精霊がやったのではない。そもそもそんな力は残っていなかった。

誰か他の精霊使いがここに精霊を寄越したのか、そう思い辺りを見回して気付いた。

谷のようになった場所に一列になってドラゴンが飛んでいた。

どのドラゴンも軽くレルチェの3倍はある。そしてその背には2人、誰かが乗っていた。

そのうちの1匹が私の方に近付いてきて、徐々に声も聞こえてきた。

「……い!おーい!」

聞こえているという合図をすることですらできない私はただじっとその背に乗っている人を見ていた。

「あ、聞こえてますか……って顔、真っ青じゃないですか!気にしすぎですかね。大陸の人だから白いんですか」

見知らぬ人だが、身につけている装飾からダルネミアの人間であることはわかった。しきりに話しかけてくるが、ダルネミアの言葉で話しかけてくるものだからうまく聞き取れない上、レルチェに掴まっているので精一杯で、返事をする気力がなかった。

「なんで……」

だから絞り出すような声になる。

「いきなりダルガが噴火して、とにかくドラゴン連れて逃げるつもりだったんです。ちょうど準備が終わった時にサグアノ殿下の精霊が宿舎に来まして、一人で土石流や溶岩を止めようとしている者がいると」

「しかも大陸の、女性と聞いちゃあねぇ。女性が一人で止めようとしてるってのに、逃げてばかりじゃ帝国の名が廃る」

ドラゴンの手綱を握っているもう一人が言う。

そうこうしているうちに、私の精霊が作った壁があった場所の下に新しい土と岩の壁ができていた。

そして、緩やかな曲線を描き、溶岩は流れの向きを変えた。

しかし溶岩は次々流れてくる。追い討ちをかけるように噴石がレルチェのすぐ横を凄まじい速さで通り過ぎていった。

改めてゾクッとした。あれが当たる可能性だってあるのだ。

でもここまできたらやれるところまでやるしかない。

疲れ切っているであろう氷精霊には申し訳ないが、もう少し力を貸してもらおう。

『主人のお力になれるのでしたら、構いません』

氷精霊はそう言って溶岩の方に向かっていく。

同時に、身体がブルっと震えた。一瞬だけど、私が分裂してその影がふわりと抜けていったような、そんな感じだ。

そのせいだろうか。妙に身体が軽くなる。

そして、氷精霊は溶岩に触れている部分の土と岩の壁に冷気を当てる。

崩れかかっていた壁が、その冷気により一気に冷えて固まった溶岩で固定された。続けざまに氷精霊は冷気を溶岩に吹きかけ、溶岩は完全に流れを変える。

「今のあなたの精霊か……?」

「そう……ですね……ええ」

まだ力は出せそうだ。何かから解放されたような、奇妙な高揚感。このまま氷精霊に続けてもらえば、いける。

やがて、溶岩の進行が徐々にゆっくりになる。

その先を見ると、湖の水が奇妙な形に歪み、なくなっていた。そしてそこに溶岩が流れ込む。

しかし溶岩の量はかなりのものだ。すぐに一杯になると思った時、湖の水がそれを覆っていた膜が弾けたように元に戻ろうとして、溶岩に押し寄せる。

ボンッという爆発音のような音がして、その衝撃で水が壁を乗り越えて王城に流れ込んだ。

あれは、大丈夫なのかな。

まあ、溶岩は止められたみたいだし、いいか。

そう思った瞬間、糸が切れたみたいに私の意識は消える。全ての血液が鉛に変わってしまったみたいに、身体が重かった。

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