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火山噴火前4

サグアノは驚いた様子で私を見る。しかしどこか納得した様子ではあった。

「そうでもなければ、わざわざダルネミアに来たりはしませんね。ですが……王太子殿下ともなれば婚約者がいるのでは?」

「いや。いない。弟との間に色々あってね。それも解決して最近いくらか話が持ち上がってきてはいて絞っていたところではあったが、まだ決まってはいない」

弟の恋人になったフーレントース家の令嬢フェターシャ。彼女は元々私の婚約者候補の筆頭だった。

しかし弟のクラヴィッテは、おそらくあの時以前から彼女のことを好いていたのだろう。

確かに当時は美しい令嬢だと思っていて、弟に対する対抗意識もあり、彼女のことは好いていた。

婚約に至らなかったのは、状況を察していた父が保留にしていたからだろう。弟は入れ込んでしまうタイプの人間だから、もし正式に発表などしたらお家騒動を起こしかねないとわかっていたのだ。

実際、フェターシャ嬢と婚約するためだろう。着実に力を集めようと個人的なパーティを開いたりして、第2王子としては十分以上に足元を固めつつあった。

事情など知らない周囲は弟を野心家と噂し、それを信じた現状を気に入らない者たちが集まって、いよいよ弟の力が無視できないくらいには大きくなっていた。

そして結局、フェターシャ嬢はクラヴィッテの恋人となった。それは普通に悔しかったし、私自身の不甲斐なさを感じていた。だからフェターシャ嬢は実はレゲルが好きだったとわかったときは、驚くと同時に妙な優越感に浸った。

まあそれは置いておいて、とにかく今の私に婚約者はいないのだ。

「確かにレネッタのことは好いている。命を助けられて嫌うわけがないからね。だが、私も立場というものは理解している。これは彼女への恩返しに過ぎないよ」

そう。これは恩返しだ。せめて彼女を救いたい。そうでなければ私はずっと後悔し続けるだろう。

そして私は、彼女を助けることのできる力を手に入れた。

『少々、約束が違う気がするのう。主人殿』

いつのまにか精霊王が戻ってきていた。少し不満げな様子で私に顔を近づける。

『まあ、よいがの。今の妾は主人殿の精霊じゃ。好きにするがよい』

……確か私はレネッタを助けるよう命じたはずだ。なぜ戻ってきたんだ?

『愛し子からの言伝じゃ』

そう言って精霊王はレネッタが何をしようとしているのか、彼女の口調のままに伝えてきた。

怪訝そうにこちらを見ていたサグアノに、私は言った。

「レネッタから伝言だそうだ。王城の後ろの湖に土石流を流すつもりらしい」


ストック原作貯まってきたのでしばらく毎日更新です

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