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火山噴火前3

私はサグアノに案内され、森の中にいた。後ろからユアリスとダルネミアの兵士が追いかけてきている。

ここまで彼が従者と乗ってきたというドラゴンに相乗りさせてもらったのだが、流石はドラゴンの国とも呼ばれるダルネミアだ。岩だらけの急な斜面をなんなく駆け上がり、馬より劣る速度ではあるが、平地を駆けるドラゴンなど、アリュでは聞かない。

「むしろ、ダルネミアでは馬が珍しいです。今でこそ主要な都市間では街道が整備されていますが、昔はほとんど手つかずの場所ばかりでした。それに国とはいえ島ですから、馬ほど長距離を移動する体力も求めていません」

ドラゴンを所有するのはアリュで言うところ馬を所有する感覚らしい。

「とは言え、空を飛ぶことのできる種はまた別です。まあ物資の運搬には適さない上、乗りこなすのは難しいので庶民の間では広まっていませんが……」

そんな会話をしていると、皇都を望む小高い丘の上に到着した。

サグアノに促されダルガ山を見ると、すでにいくらか土砂崩れが起きているようで、所々山肌がえぐれて白っぽくなっているのがわかった。

火山の上の方がうっすら赤く、心なしか膨らんでいるように見えた。

彼女は、レネッタはどこにいるんだ?

『ふむ……愛し子ならば、そこじゃ』

そう言った精霊王が示したのは、山の中腹辺りだ。

「あんなところにいるのか!?いくらレネッタでも、あんな近くでは何が起こるか……」

思わずといった様子でサグアノが言う。今にもそちらに向かいたそうであった。

「あなたは……サグアノ殿下はレネッタのことがお好きなのですか?」

つい、そんな疑問が口をつく。

……鳩が豆鉄砲を食ったようという表現があるが、まさにそんな表情をサグアノは少しの間浮かべ、自嘲するように薄く笑った。

なぜこんな質問をしたのか、ちょっと考えてみて理解した。

自分と少し重ねてしまったのだ。一応王太子という身分である私が、命を助けられたとはいえわざわざ助けに来てしまった理由。きっと同じなのかもしれないと。

レネッタが火山に向かい土石流を止めようとしていると知った時の彼の表情から、彼が心からレネッタのことを心配しているとわかった。

そして今も、 これは一国の王子としての行動としては正しくない。立場として言えば、サグアノは私を最も安全な場所に逃がすべきなのだ。ダルネミアという巨大な帝国が他国の王太子に借りを作るなど、帝国としては許し難いに違いない。今回の噴火についても、ダルガ山以外にも多くの火山を抱えるこの国は、避難の準備や段取り程度はあるはずだ。帝国の中心ならば尚更。

わざわざ土石流の流れを変える必要などないのだ。自己判断で勝手に山に向かった彼女を危険を冒してまで助ける義理もない。

しかしサグアノはレネッタを助けるために私の力を借りるのも厭わず、彼女のいるであろう方角を見つめていた。

「そうです。僕は彼女のことが好きです」

きっぱりと言い切ったその声は、するりと私の中に入ってきた。

「奇遇ですね。私もですよ」

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