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火山噴火前2

「まさか、彼女は噴火を止めるつもりか?」

この状況で戻るなんてどうかしている。何か考えがあっての事だろうか。そう、私の代わりに傷を受け止めるような彼女なら、やりかねない気がした。

「無理です。いくら彼女でも、火山の噴火を止めるなど不可能です。噴火は、人間にどうこうできるものではありません。僕たちにできるのは逃げる事くらいです」

無謀だ、とサグアノは言った。

「……私の精霊王の水なら止められるか?」

「殿下も彼女も、噴火の力を見誤っています。噴火の被害など受けたことのない国の方にはわからないでしょう。そもそも水をかけたとしてもそれが熱で一度に気化を……細かい事はいいですね。とにかくすぐにでも止めなければ」

安直に水をかければよいというものでもないようだ。

「ああ、ですが、精霊王ほどの水の力があれば……あるいは……」

そう言ってサグアノはしばらく何かを考えるそぶりをみせる。しかしわずかに首を振った。

「やはり難しい。今はとにかく、レネッタを止めなければ」

「そうですか……」

精霊王を見ると彼女は共有している私の考えを読みとり、静かに頷いた。

『任せよ。愛し子を守ればよいのじゃろう』

そう言って精霊王は火山に向かうレネッタの元へ飛んで行った。遠く離れていくその姿に僅かに不安を感じながらも、私は自分のすべきことをしなければならない。

「君は精霊使いだったね。精霊に私を守らせることは可能か?」

自分の光精霊もいるが、光精霊では噴火から身を守ることはできない。このように頼むのはまるで自分の身の安全だけを考えているようで嫌だが、立場上自分の身の安全を確保しなければならない。

ユアリスはそれを理解しているようで、頷いて虚空を見る。そこに精霊がいるのだろう。

「しかし僕の精霊はかなり消耗しています。殿下の精霊の力をお借りしたいのですが、構いませんか」

「当然だ。具体的にどうすればいい」

「殿下の精霊に噴石が来たとき、僕の精霊に伝えていただきたいのです。僕の精霊は力を使うので精一杯ですので……可能な限り僕と精霊も周囲は見ますが……」

それくらいならできるだろう。私は頷いて光精霊に指示を出す。

「王太子殿下、その怪我をしている者は我々にお任せください。怪我人がいては移動に差し支えます」

年嵩の兵士がユアリスに背負われたアルを指差した。

「この周辺の地理に詳しい者をお付けします。早くお逃げください」

ユアリスは肩に乗ったアルの顔をちらりと見る。起きる気配はなく、起き上がったとしても動くのは難しいだろう。

彼らの側にはサグアノの従者が連れてきた神精霊使いらしき医者がいる。彼に診てもらう方がよいのは明らかだ。

「そうさせていただく。くれぐれもよろしく頼む」

「はい」

そしてアルをその兵士に預け、その代わりのように若い兵士がこちらにやってきた。

「このあたりは土砂などの危険はあまりありませんが、家などはほとんどないので家内に身を隠すことは難しいです。少し歩いたところに林があるので一度そこに……」

兵士がそう話したところで、突然精霊王が戻ってきた。レネッタはどうしたのか尋ねてみると、思ってもみなかった返答が返ってきた。

『愛し子は土の者と契約しておった。このままでは皇都に岩土が雪崩れ込むゆえ、それの道筋を変えるそうじゃが……果たしてうまくいくかのう』

皇都に土砂がなだれ込む?確かにそれを防ぐことができるならそうした方がいいのだろうが……

「それは本当か!?」

精霊王の話を聞いたのか、サグアノが私の方へ戻ってきた。

「ええ。ですがそう上手くいくものですか?それで可能ならばとうにそうしているでしょう」

「そうする利点がない上に普通の精霊使いが尽力したところで抗うことは難しいからです。噴火する火山に近づくのは自殺行為ですし、地形を変えるなど土精霊使いが何人束になればいいのか……いくらレネッタの精霊が強力でも不可能だ」

レネッタがいるであろう方向を見て、逃げれば良いものを、とサグアノは呟く。呆れを滲ませながらも、その表情は彼女を心から心配しているようだった。

「……その土石流が流れるという道筋を見ることができる場所はあるか?」

私とて、レネッタに何かあって欲しくはない。

サブタイに捻りがほしいです……

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