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逃走と闘争7

『使えぬ人の子どもめ!我は滅ばぬ!愛し子を我は、我はっ!』

地面が震えるたびに、精霊王の輪郭が霞む。

『憐れなやつじゃ。消える間際に愛し子を見、囚われたか。たとえ契約しようと、貴様が消えることに変わりはない。消滅の前に、一目見れたことを喜び、消えよ』

徐々に大きくなる揺れが続く中、殿下の精霊王がそう言い、腕を振り上げた時だった。

地面がこれまでになく大きく振動し、その場にいた全員が膝をつく。

「まずい……ダルガ山が噴火するっ!」

サグアノが叫ぶと同時に、山の超絶が赤くきらめいたのが見えた。

「ははっ、あははは!はは、あーはっは!」

あまりにも場違いなその笑い声の主は、カラルドだ。

カラルドはひとしきり笑い終えると、ゆっくりと立ち上がった。そして振動が続く中、歩き始めた。

その行動の意味がわからず、呆然と見ていると、カラルドは地震で倒れて動かないお姉さんのそばで立ち止まった。

「やめて!!」

頭の中で膜が破れたように、止まっていた思考が流れ込んでくる。

カラルドはお姉さんを殺す気だ。

「お姉さんを守って!」

精霊に直接呼びかけるが、直感でわかる。間に合わない。

思わず目を閉じたその時、空を切り裂くような咆哮が響き渡った。

カラルドもハッと顔を上げる。

「……レルチェ!」

殿下を下ろしどこかに飛び去っていったように思っていたが、違ったようだ。

レルチェは矢のように凄まじい速さでお姉さんに近づき、その両肩を後脚でつかんで軽々と持ち上げる。そしてお姉さんを私のすぐ横に下ろした。

気絶しているのか、お姉さんはピクリとも動かない。

「精霊にドラゴン、王族までもあなたの味方か。なぜあなただけが、自ら力を持つわけでもないあなたばかりに集まる?俺には、ずっと傍らにいると思っていた1人すら、持つ者に奪われたというのに?」

カラルドが全ての感情を失ったような表情で私を見ていた。

しかし、私に向かって言っているようで、そこにあったのはその『持つ者』に対する怨みだった。

「どうやらあなたを絶望させ、ダルネミアを破滅に導くというのは無理そうだ。だからせめて、この序章を眺め、死のう」

カラルドは噴火目前のダルガ山をちらりと見て、薄く笑う。

「せっかくあのイグルドとかいう男からあなたの居場所の情報を買ったというのに、失敗したのは残念だ」

「……はぁ!?なんだよそれ!どういうことだっ!」

声がした方を振り向くと、そこには息を切らしたアルとユアリスがいた。

「イグルド様が俺たちの居場所をバラしたってことかよ!俺らを騙してたってことか?」

怒りをあらわにするアルに、カラルドは冷めた視線を送る。

「騙すもなにも、彼は帝国に来て最初に俺のところに来た。そこで全て話してくれたよ。今の主人を殺し、あなたを殺すことは、俺の目的でもあったから、同意した」

「彼女を殺すことが目的とは、どういうことですか兄上!」

「どういうこと、だと?俺にとってはお前も殺す対象だ、サグアノ。いや、お前さえ殺せればそれでいい。精霊王が怒り、この噴火が全てを飲み込めば、帝国もお前も終わりだ」

カラルドがサグアノを睨む。その目にあったのは、明らかな殺意だった。

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