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逃走と闘争3

投稿話間違えていました……混乱させてしまいすみません……

私から少し離れたところで、兵士たちとお姉さんは止まった。

波音しか聞こえない沈黙が、砂浜を満たす。

すると突然、お姉さんの横でお姉さんの護衛のように立っていた1人の兵士がくぐもった笑い声をあげる。

「まさか3人ごときに兵がここまでやられるとはね」

どこかで聞いたことのある声だ。しかし、兜を目深にかぶったその顔は見えない。

これ以上近付くなと睨んでいると、兵士は手を兜に持っていく。

「そしてやはり、知り合いだったか」

そう言ってお姉さんの横にいた兵士が兜を脱ぐ。

「カラルド、殿下……?」

精霊王の今の主人がいるのだから、王族の登場にさしたる驚きはない。ただ、私を追ってきたのがサグアノではなく、このカラルドであること、そしてその何かを知っているような口ぶりに、驚きを隠し切ることができなかった。

「なぜ知り合いだと知っているのか、とでも言いたそうだね。そもそも、彼女……ティスタはあなたと出会ったから、精霊王の主人となったんだよ。アリュでティスタを襲った男は確かオスルと言ったか。彼は少々特殊な目の持ち主のようで、精霊の好む人間が、少しばかり分かったんだ。彼にはその目を生かしてアリュで精霊使いを探してもらう代わりに、我々は彼の趣味の後始末をしていたわけだ」

彼の趣味……娼婦殺しの事だろう。どおりでオスルの娼婦殺しがあまり表沙汰にならず、調べても何も出てこなかったわけだ。

でも、私と出会ったからお姉さんが精霊王の主人になったというのはどういう……まさか。

「私が、あの時オスルの犯行現場を目撃したから、おねえさんが精霊使いになったということですか」

あの状況は、私にとっても非常に危険だった。私が危険な状況にあれば、精霊が周りの人に契約を持ちかけることがあるというのは身をもって知っている。でも当時の私はまだ精霊使いではなかった。それどころか、精霊の姿を見たことさえなかったはずだ。

「俺とて精霊に関する全てを知っているわけじゃない。でも、あなたの身が危険だったから、そんなあなたが見ていたから、ティスタは精霊王の興味を引いた。オスルが言っていたよ、あなたのような人を見たのは初めてだったと。周囲にも影響を与えるほどの力を、あなたは持っていた。実際、精霊王が求めている存在というのは周囲を精霊使いにするのだろう?」

身に危険が及びそうになると、精霊は周囲の人間の契約を持ちかける。私の影響があってのことだから、精霊王もその精霊使いに惹かれる……

でも、それはアリュの昔話の内容のはずだ。ダルネミア側でそれを知っているのは、イグルドが訪れたサグアノのはずだ。なぜカラルドがそれを知っているんだ?

それに、お姉さんが今ここで、精霊王の主人としているのは、私のせいだということ?全部、お姉さん今の状況も全て私のせいだということ?

全部?全部、全て私のせいで?

……違う、私は悪くない。悪くない。違う、違う、違う!だって私は好きで精霊たちに選ばれたわけじゃない。何も知らなかった。あんな子どもの頃のことをどうにかできるわけがない。結局、私は何もしていない!何もできない!それなら死んだって一緒じゃないか。でも、まだ死にたくない。そんな勇気もない。

「あなたには、精霊王の主人になっていただきます」

カラルドの声が遠くから聞こえてくる。

「ティスタを殺せ」

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