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離宮のパーティー3

嬉しそうにフェターシャ嬢と踊る殿下を横目で眺めていると、そばにご令嬢が固まっているのが見えた。フェターシャ嬢の女友達も混じってなにやらひそひそと話している。

「レゲル様の横の男性はどなた?」

「知らないわ、でもさっきからずっと一緒よ」

「まさかレゲル様はそういう……」

精霊に会話を伝えてもらっているのだが……変な噂が立っている。アルは踊ってる殿下の方を見てぼんやりしてるし。

こちらから誘えばいいのだろうが、誘うということは気に入ったということを意味するからこちらから誘いたくないのだ。

「なあ、お前誰かと踊ろうとか思わないのか?お前なら好きに選べるだろ」

「選ぶねえ……特に何も思ってないしなあ」

「お前さあ、早く結婚しようとか思わないのか?もういい年だろ」

結婚しようとか考えたこともないしなぁ。わざわざ結婚しなくてもやっていけるし、それ以前にいろんな意味で私は結婚できない。

「まあ気になる異性ができたら報告するさ」

「まあ気にはしないけどな。俺が口出すことでもないし」

「運命を信じて待つさ。……ところでアル、悪いが少し離れるぞ」

「どういうことだ?殿下見てなくていいのか?」

アルはわかっていない顔をしている。まあ聞こえていないのだから当然か。

「さっきからずっと男と二人でいるから変な噂が立ってる」

小さい声でアルに伝えると、アルは私からさっと身を引いた。

いくらなんでもその反応は無いだろう。お互いなんとも思っていなかったんだから。

「確かにそうだな。誰か踊る相手でも探してくるわ」

そう言ってアルは浮かない足取りで少し先にいた女の子に声をかけにいってしまった。

それを待っていたかのように先程のご令嬢の集団がおずおずと私の方に近付いてきた。

「あのー、先程そばにいたお方はどこに向かわれたのですか?」

先頭にいたご令嬢が口を開いた。

「彼はダンスのパートナーを探しに行きましたよ。どうかしましたか?」

私は人を安心させられるような笑みを浮かべた。今みたいな仕事で大事なのはこういう顔だ。

「いえっ、いきなりいなくなってしまわれたのでどうなさったのかと……」

ご令嬢は頬を赤らめている。この顔はちょっと女の子に対して効果を発揮するようで、アル曰く『女たらし』の笑顔だそうだ。そんなつもりは毛頭ないから気にはしていなかったが、今思えば少しまずいかもしれない。

まあ貴族のご令嬢ともなればパーティーに行けば出会いはごろごろ転がっているはずなので、こだわる必要はないと思う。ああ、早く帰りたいな。

「彼は私の友人です。貴女のような美しい女性に心配されれば彼も幸せでしょう。で、ご用はそれだけですか?」

ご令嬢達は少しうつむいて、やがてほぼ一斉に言った。

「私と踊っていただけませんか?」

「あいにく私は一人なので……皆さんとは踊れません」

私はさも残念そうに言った。こうすれば何人かは諦めるだろう。本意ではないがその残ったご令嬢と踊ればいい。

とは思ったものの、なかなかご令嬢達は離れていこうとしない。むしろ増えた。

私はしばらく迷ったが、一番近くにいたご令嬢の手を取った。

誰かと踊らない限りいなくなることは無いだろうと思ったから。

一応適当でないことを示すためににこやかに笑いながらご令嬢の手を取ったが、ちょっと視線が怖い。










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