逃走と闘争2
足止めのため、水精霊に操らせた海の水が兵士たちに襲いかかる。雷精霊にも、軽い電撃で兵士たちの動きを止める。
アルの水精霊も加わり、兵士の口を塞ぎ気絶させていくが、全員がそううまくいくとは限らない。
精霊使いらしき兵士は手では跳ね除けられない水を逆に操ったり風で飛ばしたりして対応している。まあ、そう簡単にはいかないか。
そうこうしているうちにも、兵士たちはどんどん近付いてくる。てっきりはじめ追いかけてきていた兵士たちだけだと思っていたが、どうやら違うらしい。
精霊王もこの場にいる。今は味方兵士も多くいるから何もしてこないが、いつ攻撃をしてくるかわからない。
精霊たちのおかげでいくらか数は減ったが、ついに兵士が迫ってきた。精霊たちの攻撃を耐えただけのことはあり、強そうな者たちばかりだ。
彼らはまずアルとユアリスを狙ってきた。2人を精霊でサポートする。もちろん近づいてきた兵士たちも気絶させる。私はいいが、このままでは2人がもたない。
そして、兵士の攻撃を防ぎきれず、敵の精霊の力もあってかアルは波打ち際あたりまで吹き飛ばされる。
「アルっ!!」
アルは精霊使であって、騎士ではない。戦いが専門ではないのだ。
「ユアリス!アルを守れ!」
多分だけど、兵士たちは私たちを殺そうとはしていない。誰か1人を捕らえ、人質にするつもりだろう。そうなれば私はきっと投降する。
「……わかりました」
そんな私の性格を知っているからだろう。ユアリスは戦っていた兵士を半ば力技で倒すと、吹き飛ばされたアルのもとに行き、海を背にしてアルを庇うように立つ。
「ありがと、ユアリス」
そう呟いて、私は2人のところに私の氷精霊を向かわせる。
分厚いドーム状の氷が2人を覆った。私の考えに気付いたユアリスが慌てて出ようとしたが、氷の生成の方が早い。
精霊王の前では私の氷精霊の氷の壁など、卵の殻のようなものだろう。でも少しでも時間稼ぎになれば、その間に兵士だけでもなんとかできないか。異常に気付いたイグルドが助けに来るかもしれない。
一瞬、浜辺を太陽が爆発したかのような強烈な光が覆う。光精霊の閃光だ。
その隙に私は風精霊と水精霊に命じて、風邪で水の塊をいくつもまとめて兵士たちに叩きつけた。2体とも先程小屋から逃げる時に力の大半を使い果たしている。これで一掃できなかったら、次は火精霊に頼るほかないのだが、火精霊による攻撃は少し間違えば兵士の命を奪うことになる。これで終わるか、と思った時、白い布が飛んだ。
……精霊王の主人の顔を覆っていた布ではないだろうか。精霊王の主人は、どんな顔をしているのだろうという興味から、気付けば私はそちらを向いていた。
どこかで見た顔だった。
「お姉、さん……?」
虚ろなその目は私を見てはいなかった。表情もない。けれど、絶対にそうだとわかる。
あの時、幼い頃に私の目の前で彼……オスルに殺されたはずのお姉さんが、そこにいた。
そして呆然と立ち尽くす私に、なおも立っている兵士と、お姉さんがジリジリと近寄ってきていた。
もう12月とか早すぎますね……
うっかり冬眠してしまわないよう頑張ります(_ _).。o○




