隠れ家2
藁のようなものの上に落ちると、その横にそれとなく置かれていた荷車の荷物の隙間に押し込められた。しばらくなすがままになっていると、上の方から声がした。
「無理矢理押し込んでしまいすみませんでした。居心地は良くないと思いますが我慢していただけると……あと、精霊たちを先程落ちた藁のある荷車の方に付けていただけますか?レネッタさんの居所が精霊の集まり具合でバレてしまいそうなので」
ユアリスの声だった。
確かに私がいると精霊がぞろぞろ後を付いてきて、精霊からすれば一目瞭然だ。まあ今見つかってしまえばアルとユアリスが捕まってしまう。
「それは、まあいいんだけど……それよりなぜユアリスとアルが一緒にこんなところに?」
イグルドが来ているのは知っていたが、この二人もいたとは。
「お前を助けるために決まってるだろ。イグルド様に頼んだら視察の名目で一緒に来れることになった」
「そういうことか。でもまさか、こんな強硬手段に出るなんて思わなかった」
わざわざ野盗を雇って襲ったのだ。アリュという国に関わることとはいえ、他国でならず者を使うのはどうかと思うが……
竜車に乗っていたのが私で、わりと従順だったからか、護衛の兵は少なく、目立たないようにされていた。護衛の多くは、自分が何の護衛をしているのか知らない者がほとんどだっただろう。
だからこうして野盗と組んだ程度で私を連れて行くことができた。イグルドの考えは間違っていない。でも……
「最初、あれはわりと本気で殺しにきてた気がする」
精霊の助けがなければ、私は今頃あそこで首から盛大に血を流して死んでいただろう。
「合図があったら俺らでお前を助けるってことだったんだよ。最初は驚いたけど、本気でかからないと怪しまれるだろ?」
合図とはあの煙幕のことだろう。アルの声がして思わず手を伸ばしたが、これはよかったのだろうか。私は先程、ダルネミアの皇帝に精霊王の主人となる旨を了承したばかりである。裏切ったと思われるに決まっている。
「精霊王のことだったら俺らもイグルド様に話を聞いてる。事情はわかって助けたんだからいなくなったしないでくれよ?」
「精霊王のことを知ってるのか?」
驚いた。精霊王のことは知らないと勝手に思っていたが、違うようだ。
「イグルド様に船で教えていただいた。なんか面倒なことに巻き込まれてるんだな」
……イグルドは精霊王の事を知っていたということか?だとしたら昨夜サグアノに話した内容というのは、精霊王に関することだったのか。だとしたら昨夜のサグアノの様子にも納得がいく。
とりあえずはサグアノたちのところに戻らずに、まずはイグルドの話を聞く必要がありそうだ。
「これはどこに向かっているんだ?それにイグルドは?」
イグルドは一緒にはいない。賊に紛れていたし、そう簡単にあの場から逃げられないだろう。
「今は身を隠せる場所に向かっています。使われていない小屋があるので、そこを借ります。イグルド様は、本人が大丈夫だと言っていたので、それを信じるしか……」
うーん、心配だが、本人がそう言うなら信じるしかないのだろう。
それにしても、精霊王について知った上で私を助けたのだとしたら、アリュとしてはダルネミアがどうなっても良いということなのだろうか。それとも、何かが違うのか。
とにかく、イグルドに話を聞くしかなさそうだ。




