表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/276

書架の裏側3

「なぜ父上がここに……?」

「なぜも何も、ここは私の部屋だ。お前が来るとは思っていなかったが……」

どういうことだ?なぜ書架の裏が父上の部屋に繋がっているんだ?そして、周りの者達はいったい誰だ?

「失礼いたします、殿下」

そう言って父上の周りに集まっていた者のうちの一人が近づいてきた。

「私はデュード。ゲーテの長をしております」

「ゲーテ、だと?」

ゲーテといえば言わずと知れた反王国組織ではないのか?なぜ父上とそんな組織の長が一緒にいるんだ。

「誤解があるでしょうから先に訂正させて頂きますが、我々は一般的に言われているゲーテではありません。国を裏側から監視する組織です」

「それならば、反王国組織のゲーテはいったい何だ?」

「あちらは我々の存在を知って、勝手に名を使っている連中です。まあ元々我々の一員であった者が、我々の理念を勘違いし派生したものでもありますが……今はあまり関係ありません。それよりも、殿下があの通路を利用しここに来た理由を教えていただけますでしょうか」

「僕の部屋にあった本に手紙を挟んであった。あの通路に入る方法だ」

「ああ、イグルドか……やつならやりそうなことだ。最後まであの精霊使いを擁護していた、殿下にここまでの通路を教えたということは、あの精霊使いの肩を持つ殿下ならば今回のことについて何か妙案を出してくださるかももしれないと思ったのでしょう」

「妙案?何のことだ?」

あの精霊使いはレネッタのことだろう。彼女のことを話していたのか?こんな夜遅くに国王の部屋で?

「……お一人で誘いに乗るほどの覚悟があるようですので、この際ですからお話ししましょう。陛下、よろしいでしょうか?」

「ああ。国王となればいずれ知ることだ」

父上がそう言って頷くと、デュートは言った。

「我々、ゲーテはあの精霊使い、レネッタを殺すつもりでした」

「は?一体彼女が何をしたと?確かに男のふりを……」

「していましたが、それは関係ありません。無礼を承知で申し上げますが、殿下はまだ今回の誘拐の裏を何もご存じない。しばらく我々の話を聞いて頂けませんか」

「ああ……わかった」

色々と聞きたいことはあるが、まず話を聞こう。その方が早い。

「まず殿下、精霊王をご存知ですか?」

「あの昔話や童話に出てくるあれか?一応知っているが、ほとんど作り話の類だろう?」

「はい。巷に出回っているものは全て作り話です。しかし、精霊王は実在します」

そう言って、別の男が一冊の古い本をどこからか持ってきて僕に渡した。

「これはハウリル書、アリュ王国建国以前にこの地にあったエディス王国の王子ハウリルが残した記録です。大災害から逃れた彼は、大災害の前後をこれに記しました。そしてアリュ建国後、初代国王にこれを託しました」

「エディス崩壊のきっかけとなったという大災害の事なら知っている。未曾有の嵐にあらゆるものが流されたとかいう話だろう?」

当時のエディス王国は大陸でも指折りの大国で、一時は大陸の半分近くをその支配下に置いた事もある王国だ。

しかし、その王国は突然の嵐によってあっけなく終焉を迎える。

激しく吹き荒れる突風に木々はおろか石壁すらなぎ倒され、滝のように降り続く大雨は多くの建物を破壊した。三日三晩続いたその嵐が去ると、そこには泥にまみれた瓦礫と無数の屍のみが残されていたという。

あまりに突拍子もない内容のため、研究者の間では嵐はきっかけに過ぎず、実際は嵐が引き金となり起こった戦争であるという意見もあるが……

とにかく、その荒れ果てた土地をアリュ王国の元となった国、エディス王国の属国であったアリカニア王国が支配し今に至るのだ。

一大王国を滅ぼしたこの嵐がなぜ起こったのかはわかっていない。しかし大昔のことであるため、嵐がエディス滅亡のきっかけである事は事実だとしても、単にその嵐を誇張し表現しただけではないのかと言う見方もある。

「それが今更どうしたとというのだ。今起こっている事とその嵐に何か関係があるとでもいうのか?」

もしその嵐が起こる予兆があるとでもいうのならぜひ聞いておきたいところだが、それならそうと早く言うだろう。いったい彼らは僕に何を伝えたいんだ?

「はい。おそらくそうであると、我々は考えています」

「おそらくでは困る。はっきりしてくれ」

回りくどい言い方は嫌いだ。こういうあまり余裕のないときに焦らされるのは特に。

苛立ちが伝わったのか、デュードは一つ息を吐き、落ち着かせるように言った。

「精霊王がその嵐を起こした。そして再び同じようなことがダルネミアで起こります」

「まさか、精霊王がエディス王国を滅ぼしたというのか?そしてそれが次はダルネミアだと?」

精霊王の実在云々については置いておき、ダルネミアに精霊王がいて大災害を起こす、そしてそれが彼女と何か関係があるというのか。

「その大災害に対抗する手段として彼女を連れて行ったのか?」

それくらいしか考えることができない。精霊王がなぜか災害を起こすから、その前にどうにかするということか。

しかし、そうだとしても彼女には精霊王を止めるほどの力などないだろう。精霊使いとして優秀でも、使役する精霊が他より少し強く数が多いだけのことだ。大災害を止められるほどの力はない。

「いいえ。違います。ハウリル書の七章をお読みください。私が話すよりも良いでしょう」

この古い書物に、いったい何が書かれているのか、とりあえずその指示に従いパラパラとページをめくる。

第七章は『精霊王の待ち人』と題されていた。

更新ができそうできそう詐欺をはたらいてしまっています(・・;)

精進します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ