表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/276

口裏合わせ4

久々すぎる投稿で若干手が震えました。

続きです。

『あのサグアノとかいう男の方がいいと言っては?というあの男からの伝言です』

壁の近くにいた精霊が近寄ってきて、ゼイドを指差した。

どうやらゼイドのこの壁の中にゼイドの精霊は入れないが、意思伝達程度ならできるらしい。

『私個人の意見ですが、サグアノ殿下の方がよいのでは、と言っています』

いやいや、確かにこっちのカラルドっていう王族よりはサグアノの方がなんだかマシな気がするというか、私の好みとかではなくとりあえずカラルドよりはって感じだし、そう発言してからの後が怖い。

『こちらとしても非常に申し訳ない状況になった。もういっそ主人のマシだと思う方を選んでください、と言っています』

マシって……マシなのはサグアノだけど、あくまでマシってだけだよ?婚姻結ばずそのまま精霊王のとこ行く方が確実に早いですが?

「精霊と話しているのかな?俺だけ除け者にされたみたいなんだけど」

うっ……まあ見ればわかるか。ていうか、近い。

カラルドの顔が目と鼻の先にある。少し頭を動かせば当たりそうだ。

よくよく見ると、ますますサグアノと似ている。サグアノよりは柔和な感じだが、彫りは深いし顔の形とか、声の感じとか似ている。表情と口調でこれだけ雰囲気が変わるものなんだなと違う方向に思考を逸らしていると、ぐいっと顎の下に手を入れられて顔を上げさせられた。

「君の役割のことは重々承知だ。その上で言っている。そして君の弟や妹の面倒をきちんとみよう」

どこに不満があるのかと言いたげにカラルドは言った。

私の役割は精霊王と契約してこの身を捧げることだ。そのこと自体に不思議と恐怖はないが、気がかりなのはアリュに残った弟たちのことだ。今は王国の庇護下にあるが、いつまでもそうであるとは限らないし、カーレル様がいつまでも面倒を見てくれるとは思っていなかった。

「サグアノでは力不足だろう。あれは中身はまだまだ子供だよ?俺の方がいいと思うけどな。というかゼイド、なぜ弟だということになっているんだ?俺がなるということになったという連絡は少なくとも3日前には届いているはずだが」

「はい。届いてはおりましたが、サグアノ殿下が明日、皇帝陛下に彼女を妻とする旨を報告すると言われました。帝国の利益に変化がなければ、同じ政略的な婚姻でも少しでも互いを思う組合せの方がよいと、陛下は判断なされるでしょう。彼女を混乱させないためにも、サグアノ殿下であるとお伝えしました」

突然話を振られたにもかかわらず、ゼイドははっきりとした口調でそう答えた。

一部物申したい内容ではあったが、カラルドよりはサグアノよりマシだからという理由で黙っておく。

サグアノは船でのことといい確かに子供っぽいところはあるが、だからといって力不足であると判断はしていない。

カラルドという男の性格は知らないし、サグアノについてもよくわからない。私にとって大事なのは、どちらがより弟達の面倒を見てくれるかである。変わらないなら正直どっちでもいい。

心なしか睨み合っているように見える二人を見ていると、壁の近くにいた精霊が再び近寄ってきて言った。

『頭が痛いフリをしてくれればとりあえず追い出せる、とのことです』

あー、それいいな。

……まてよ?確か今、イグルドが来てるんだよね。追い出すのはまずくないか?騒ぎになったりしないかな。

『あの男がいるのはこの場から離れたところなので、問題ないと思います。それにしても、我の力が使えればこんな男すぐさま消し飛ばしますのに』

消し飛ばすのはまずい。でも、吹き飛ばすくらいなら……なんて思っていると、ゼイドが何かを訴えるように私の方を見た。

……はいはい。

私は額のあたりを押さえる。

「ん……」

少し声を出して違和感を感じてる風に首を傾げると、ゼイドが不安げに問いかけてきた。

「大丈夫ですか?」

「お風呂に入ってから少し頭が痛くて」

「それは、気付かずすみません。カラルド殿下、今日のところはお引き取り願います」

いかにもそれっぽくゼイドは言う。今後、ゼイドの言動には気をつけよう。

「いや、俺の妻になる女性を放っては置けない」

まだそうと決まっていませんが?喉あたりまで出かけたが、それは言わなかった。かわりに。

「すみません。少し混乱しています。しばらく一人にしてください」

直接的すぎたかなと思ったけど、これくらい言わないと一人にはなれないだろう。

カラルドは何か言いたげだが、やがて軽く息を吐き微笑んだ。

「それならば仕方ないね。早く治してくれよ」

そう言ってカラルドは入って来たときと同じように私の手を取って唇を落とした。

「明日、王城で会おう」

そう言い残し、カラルドは颯爽と去っていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ