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離宮のパーティー

ついにそのパーティーの日になった。

アルペの離宮まではだいぶ距離があるので、殿下が私とアルの馬車を手配してくれていた。

待ち合わせの場所に到着したのは上級貴族が乗るような馬車、アルは驚きで目を見開いていた。

「馬車なんていつ以来だ。しかもこれ……」

「まあ乗ろう。乗って話すぞ」

私は馬車の前でおろおろするアルを無理矢理乗せて、そのあとに私も乗り込んだ。

中は豪華な造りで、椅子は本物の毛皮が使われていてふかふか、カーテンは絹、所々に金細工……

こういう馬車に乗ったことはあるが、その時はカーレル様もいたから平気だったが、今日は乗っている理由というか、私が乗ってもいいのかとなんとなく落ち着かない。

「すげーなこの馬車」

「まあこれが殿下の普通なんだろ、感覚が違うな」

それに呼応するようにレルチェがキュウと鳴いた。

ドラゴンは身体よりも先に知能が発達するらしく、今はまだ手のひらサイズだがすでにある程度の指示を聞いてくれるようになった。

問題は雛期を過ぎてから。雛期が終わる頃はまだこの小型犬くらいのサイズらしいのだが、そこから半年で一気に成長するらしくどうするべきか……

「にしてもなんでドラゴンなんだ?」

アルがレルチェを指差しながら言った。

この前見せたときは驚いて口をぱくぱくさせていたので、聞くことができなかったのだろう。

「さあね、カーレル様はお土産にもらったとしか教えてくれなかったし」

「名産品だとしても生き物を渡すか?」

アルは理解できないという感じの顔だ。

「お偉いさんの考えることはよくわからない」

「……お前もお偉いさんだろ」

「まあ、庶民には理解できないってことだ」

アルがレルチェに手を伸ばした。レルチェはさっと私のポケットに隠れる。

「嫌われてるのかね」

「いや、ドラゴンは警戒心の強い生き物だ。警戒されてるだけだろ」

私はアルにレルチェのおやつの木の実を数粒渡した。

「なんだこれ?」

「レルチェのおやつ。こいつ食べ物に弱いみたいだから」

「……そんなんでいいのか?」

アルは心配そうな顔をしてレルチェを見た。よからぬ人間になついてしまうのではと心配しているらしい。

「そこらへんは今教えてる。知らない人から貰わないように。賢いからそのうちできるようになるはず」

「へぇ」

そう言ってアルはレルチェに木の実を近付けた。

レルチェはちらりと私の方を見た。私がうなずくとパクリと首を伸ばして木の実を食べた。

しばらく口を動かして木の実を飲み込むと、もっとくれというようにレルチェはアルの持っている木の実をじっと見た。

「やっていいのか?」

「その程度じゃ太らない」

アルはそれを聞いて再びレルチェに木の実を与えた。今回は迷いなくそれに飛び付いて食べる。

こんなにすぐ人を信用しないように教えた方が良さそうだった。



そんなことをしているうちに、アルぺの離宮に到着した。

ひさびさに出た外。陽の光が眩しい。

離宮は休む鳥をイメージして設計されていて、きれいな白い大理石で造られている。

パーティーは離宮の庭で行われるようだ。

使用人に案内されて、私達は会場に向かった。

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