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湯煙の中で

サグアノの屋敷に到着してなぜだかのんびり温泉、というものに浸かっている。

アリュでもこうしてお湯に浸かる施設や設備はあるが、これが当たり前というのが凄い。しかもそれがあちこちで湧いていて、水を温める必要もないというのがまた凄い。アリュだと夏場は普通に水を浴びて終わるのが普通だ。暑いのにわざわざお湯を沸かすなんて勿体無いし。

そしてこれがまた広い。夜なことと湯煙のせいもあるけど風呂の端が見えない。以前にダルネミアに来た時に何度か入ってるから初めてではないけど、ここまでの規模じゃなかった。それに少し濁ったお湯だからか池に浸かってる気分だ。いや、悪い気分ではない。むしろ気持ちいいし、しかも治癒効果まであるとか。温泉凄い。

ただちょっと嫌なのは、侍女たちの視線だ。

介護とかそういう意味で付けられてるんだけど、なんか棘があるというか、歓迎されてる感じはない。

精霊王が云々の話を知らないだろうから、いきなり主人が妙な女を連れてきたっていう警戒だと思う。それに一応監視っていう目的もあるだろうから、歓迎されたらむしろ怖いか。

だから所々にある大きな岩の陰に隠れるようにして視線から逃れていた。

ぼんやり空を見上げながら口の下くらいまでお湯に浸かる。

星空が見える。いつもとは全く違う星空。

遠く離れても同じ空を見ることができるっていうけど、あれって実際は違うな……遠すぎると空も違う。

なんてこと考えていたら、ちょっと……かなり暑くなってきた。外も中も暑い。一旦上がろう。

お湯の中なので、多少足が不自由でも動くことができる。でも、さすがにお湯から上がるのは難しかった。ずりずり這い上がるように上ろうとしたら侍女に助けられて、少し離れた洗い場まだ連れて行ってもらった。

「レネッタ様、背中、洗います」

岩を削って作られた椅子に座ると、たどたどしいサヴァ語でそう言われた。

「大丈夫です。自分でできます」

ちょっとゆっくりめに言って、私は侍女から石鹸やらを受け取って身体を洗った。別に信用してないわけでは全くないけど、人に洗ってもらうって気疲れする……

ダルネミアの風呂の入り方も、何度か経験してるからわかるし。

そんなこんなで一通り洗い終わったんだけど、もう一度入ろっかな。冷えたわけではないけど、もう少しのんびりしたいし。

手伝ってもらい再びお湯に浸かる。息を吐くと、僅かに体が沈む感じがした。

「精霊王か……」

口に出してみてもまだ実感がわかない。これなら、どこかと一戦交えるからその戦力にとか言われた方がしっくりくる。

『お呼びかの?妾達の愛しき人の子』

「え?」

私がいきなり声を上げたためか、侍女たちが一斉にこちらを見た。

いや、精霊と喋ることは止められていない。今の所私が協力的だからか、ゼイドの神精霊の壁も張られておらず、その気になれば精霊を使って脱走もできる。しないけど。

とりあえず温泉の床で足を滑らせたふりをして誤魔化す。

怪訝そうにしながらも侍女たちは何も言わなかった。

『やはりそなたの側は落ち着く。そうだろうお前達?』

突然現れたその精霊は私にもたれかかるようにしながら、私の精霊達に声をかけた。

『はい。とても心地よい場所です』

私を気にかけて声をかけてきた精霊はいるが、他の精霊に干渉するのは初めて見た。そして、精霊達がそれに応えるのも初めてのことだ。

普段なら誰か私の横にいるかで揉めるような精霊達が、恭しげな様子で私の横にいる精霊を見ていた。

『妾が誰か、という顔をしておるの。妾は人の言う精霊王。一度お会いしているはずじゃが?』

え?そうなの……?覚えてないし、それにこの精霊が精霊王?普通の精霊とあまり変わらないように見えるんだけど……

『それは妾が力を抑えているからじゃ。そなたに集まる精霊の一体くらいにしか見えおらぬじゃろう?まあ、以前お会いした時はそこまで力を抑えていなかったゆえ、違うと思われておるのじゃろうが』

いや、それにしても記憶にないのだけど……それにこの精霊が精霊王なら、今契約すればこの状況もすぐ終わる?でも精霊王は今、契約してる主人がいるはずだよね?それなら今はできない?

というか、他に主人がいるのに姿を現してていいの?

『問題ない。妾に主人はおりませぬゆえ。契約いたそうか』

ちょっと待て!それならこの精霊王は、サグアノ達の言う精霊王とは別の精霊だ。契約するのはまずい。精霊王と契約したら意識乗っ取られるらしいし、そもそも私の使役できる精霊の容量が精霊王と契約したらどうなるかわからない……

『おや?妾ではご不満かの?お望みならこの周辺を吹き飛ばす嵐を呼ぶことも可能じゃが……』

いや、別にそれは望んでない。なんかこういう極端な辺り、やっぱり精霊だなと思う。

『やはり変わったお方じゃ。もし気が変わりましたらいつでもお呼びくだされ。少なくともそなたの生きている間は、そなたのためにこの身を使おう』

そう言い残し、その精霊王はどこかに消えていった。


夏休み終わってしまいました…

あんまり書けなかった(去年も同じことを言っていた気がします)

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