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報告

久々?のアリュ側の話

王太子視点です

「殿下、例のメイドについていくつか報告がございます」

あの日、レネッタが誘拐された後に不可解な発言をしたメイド、カネラについて調べるように命じていたナディスが部屋にやってきた。

僕は目を通していた書類を置き、ナディスに報告をさせる。

「エイヴォン家の三女で、四年前から王宮で働き始めて今に至ります。働きぶりも真面目で、特に問題を起こす事もなく他のメイド達との仲も悪くない。ごく普通のメイドです」

まあ、目立つメイドだったら誘拐に加担などしないだろう。とりあえず黙って続きを促した。

「彼女の家であるエイヴォン家は、あのエルセム家の区の貴族で、エルセム家とは親交があります」

「エルセム家……オスルか」

エルセム家当主のオスル・エルセムは、夜会の少し前から娼婦殺害の罪で領地で軟禁されている。その彼の罪を暴いたのはレネッタだった。もしその報復で、彼女の誘拐にエイヴォン家が一役買ったというならいくらか納得できる。

ナディスは頷き、さらに続けた。

「そしてエルセム家についても調べた結果、ダルネミアのいくつかの貴族との繋がりがあり、さらにある家と頻繁に連絡を取り合っていたそうです」

「ある家?」

「それが、その家がどこなのかについての情報が全く得られなかったのです」

「そうだとすると、なぜやりとりの相手が貴族だとわかった?ダルネミアの貴族以外の組織だとか、他の貴族ではないどこか、という可能性もあるだろう」

ナディスの言い方だと、どこかの貴族と秘密裏にやりとりをしている、というように思える。しかし、全くわからないのになぜ相手が貴族だとわかるのだろうか。

「ある家人がやりとりに使われている封筒を何度か見ていたようで、その装飾が貴族、あるいは王族に送ってもおかしくないようなものであり、組織や平民相手にそのような封筒を使うはずがないと言っていました」

確かに、秘密裏なやりとりであっても、よっぽどの事でなければそんな封筒を使うことはないだろう。

逆にそれが罠で、平民に送っていたことも考えられるが、そんな目立つであろう封筒を送る方が危険だ。

「わざわざそのような封筒を使う必要のある相手ということか」

「よっぽど高位の貴族か、はたまた王族かはわかりません。ですが、これでカネラというメイドがレゲ……レネッタの誘拐に無関係とは言い難くなりました」

ダルネミアの貴族と連絡を取り合うのは別に珍しいことでもない。秘密裏にというのも気になるが、咎める事でもない。

しかしレネッタ誘拐のタイミングとその相手が、あまりにも状況に合いすぎている。

「オスルと面会したいところだが、あまり時間がないな」

オスルは領地で軟禁状態で、呼び寄せるにせよこちらから向かうにせよ時間がかかる。ナディスは精霊を介して情報を受け取っていたから1日で調べ終えているが、これはオスルから直に話を聞きたい。それにただの役人や騎士が話を聞くのでは、彼は何も答えないだろう。

「とりあえず彼をこちらに呼び寄せる。手はずを整えてくれ」

「ですが殿下、補佐官の誘拐に殿下がここまでする必要があるのですか?確かに彼女は優秀な精霊使で、殿下の命を助けたかもしれませんが、殿下は王太子です。これまでも、そしてこれからも多くの者が殿下をお守りするでしょう。彼女のみを特別に扱う、その理由を教えてください」

ナディスの言う通り、確かにこれは特別扱いだろう。今まで僕を守って怪我をしたり死んだ騎士や従者は何人もいる。

その場合はその家族に暮らしに困らない金を与えたり治療費をこちらが負担するのみで、実際に何かするということはほぼない。

ちらりと空を見る。

そこにはほんの少し前までいなかった精霊がいて、僕に笑みを向けている。

「僕に精霊を与えてくれた礼、そしてその時果たせなかった役目のため、だ」

偶然だと周囲は思っているらしいが、僕は精霊が彼女を助けるために僕と契約したと思っている。そしてその時は結局、きっかけを作ったが結局彼女に助けられた。

僕はまだ、彼女を助けることができていない。

「それはどういう意味です?」

「彼女を助けないと、せっかく契約してくれた精霊が可哀想だからだ」

「よくわかりませんが、殿下のお心は変わらないということでよろしいですか」

「まあ、そんなところだ」

ナディスはため息をついて何か言いたげな目でこちらを見たが、結局特に何か言うでもなく、オスルを呼び寄せるために部屋を出ていった。

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