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厄介事3

「他言するなよ」

そんなこと言われなくても言いませんて、発信源丸わかりじゃないですか。

「いっそのこと告白してしまってはどうでしょうか?」

私が言うと殿下は視線をそらした。

「おまっ、よく殿下にそんなこと言えるな」

アルがぼぼそっと言った。

「兄君……王太子殿下より先に告白しておいて、フェターシャ様の気を殿下に傾けさせるとか……王太子殿下はまだ何も言っていないのでしょう?」

「そうだが……」

断られたらどうすると言いたいのだろう。

「当たって砕けろとも言うじゃありませんか、いろいろ踏ん切りがつきますよ」

殿下の恋が成立するなり、砕けるなりして早くこの問題から降りたい。

「あなたは恋をしたことが無いだろう」

確かにありませんがね、実際今の私が恋なんてしたら好きになるのは男性ということになる。とんでもないことだ。世の中にはそういう趣味の人がいるらしいが、残念ながら私はそういうのが好きなタチではない。

「ありませんよ」

「だからそんなことが言えるんだ」

「殿下に告白されたら大概の女性は落ちますよ」

私達のやり取りをアルがはらはらしながら見ている。心臓に悪いんだろうな。

「アル、何かいい案はないか?」

私はアルに話をふった。まさか話をふられるなんて思ってもいなかったのだろう。身体がビクッって感じに飛び上がった。

「おっ、俺?俺は……」

「一時期女精霊使の誰かをいいなとか言ってたろ」

「あれは何て言うか……好みだよ、そういうのじゃなくて」

必死でアルは弁解した。

あれも恋ではないのだろうか。結構真剣にデートに誘おうかとか考えてたくせに。

「ですが殿下の思いを伝えなかったら王太子殿下にフェターシャ様を取られてしまいますよ。伝えないことには何も進展しません」

私はなんかもう、いろいろ気にせずに殿下に言った。早くこの状況を抜け出したいし、今の殿下がこんなことを気にするとは思えない。

誰だって思いを伝えられれば嬉しいはずだ。

殿下にここまで思われているのだから悪い気はしないだろう。

「できる手伝いならします」

フーレントースには確かフェターシャ様以外にも娘しかいないはずだ。殿下が婿入りすれば王位争いもどうにかなりそうだし。

「……」

「……」

長い沈黙の後、殿下はぼそっと言った。

「私はどうすればいい」

「告白する気になったんですか!?」

アルは結構な勢いで殿下に言った。

「だが方法が……」

「パーティーに招待するとかでいいのでは?」

「パーティーならこの前開催したばかりだ」

「二週間後くらいにアルペの離宮の改装が終わりますよね、その時にパーティーを開けばいいのでは?」

アルペという山のふもとにある離宮で、王族の避暑地と、一部を公開することで新たな観光地とする予定になっている。

「そうか、それがあったか」

殿下は納得したようで、告白できるかもしれないと少し嬉しそうだ。

「ではもうこの件は解決しましたね」

後は殿下の恋が成就するなり、砕けるなりしてしまえばおしまいだ。

にしても何で今まで思い付かなかったのだろう。考えてはいたけど踏ん切りがつかなかったとかそんなのかな。

私はこの件は終わったと話を切り上げようとしたが。

「あなた方にもパーティーに来ていただく」

「えっ?」

「この提案をしたのはあなた方だ」

後は殿下が勝手にやってくてればいいと思っていたのに。

「俺は提案してませんけど……」

自信なさげにアルは言った。

「招待状は送っておく、絶対に来るように」

殿下はそれだけ言うと立ち上がって行ってしまった。

足取りが軽い気がしたから、結構乗り気なのだろう。

まあパーティーに出るだけでいいならまだいいと自分をなんとか奮い立たせた。

「なあ、俺はどうすればいいんだ?」

アルが不安げに尋ねてきた。

「そんなに構えなくてもいいと思うぞ。まあ行くだけだと思ってろよ」

「いや、俺さあ、貴族とはいえ次男坊だからパーティーとか全く出席したことがないんだよ。絶対お偉いさんばっかり集まるパーティーだろ?どうすればいいのかさっぱりだ」

「まあ当日は一緒に動こう。私もパーティーは苦手だがフォローくらいできると思う」

私はアルを立ち上がらせて温室を出た。

パーティーは憂鬱だが、それだけで問題が解決するなら安いものだと思おう。

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