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アリュでは

「殿下、そろそろお休みになってはいかがですか?」

心配顔でそう声をかけてきたのは従者のナディスだ。

「この程度では倒れん。なに、先日の怪我はとっくに治っているし、不調もない」

レネッタが誘拐されてからすでに三日、ダルネミアへの使者を乗せた船は二日前に出航している。

しかし当然ながら、その間全てを彼女のことに使えた訳ではない。

夜会の被害とそれを補う予算の書類の決済、王族としての様々な公務、出席しなければならない行事関係の資料の確認等々で日中の時間はほぼ無いに等しい。

だからこうして夜の寝る前くらいにしかレネッタの誘拐関連の情報収集はできない。

本来なら僕がする必要はないのだが、どうしても何かをしていずにはいられなかった。

書類を脇によけてナディスから受け取った別の資料を机に広げる。ナディスにまとめてもらったレネッタ誘拐に関する資料だ。

「明日にでも目を通せます。もう夜遅いですし……」

「大丈夫だ。明日の朝になればまた別の書類が届く。やれるのは今しかない」

まだ何か言いたげなナディスを無視して、僕はきっちりとまとめられた書類に目を移す。

パラパラとそれをめくっていると、目撃証言に関する資料があり、それに目を落とした。

『二人組の男のうち一人はつり目、もう一人は浅黒い肌をしていた』

どうやらレネッタのいた部屋の近くの廊下を歩く二人組をたまたま見ていたメイドがいたらしい。他にも何件か似たような証言があった。

まあどちらも役立つ情報ではない。つり目と浅黒い肌なんていくらでもいるだろう。それにダルネミア帝国の関係者なら多少肌が黒くても……ん?ダルネミア帝国の人間なら、肌が黒い……何かが引っかかる。

アリュ人ではないかもしれなかった、はじめにその可能性を消したのは誰だ?ダルネミア帝国の人間であるということを隠すなら、その一番はっきりした外見的特徴を……

そこでハッと思い立った。そうだ、彼女なら適任だ。むしろ、それが向こうにとっても一番都合のいい駒になる。

僕はその思い付きを確かなものにするために書類を漁った。きっとあるはずの資料だ。

「ナディス!」

「はっ、はいっ!」

突然名前を呼ばれ驚いているナディスに僕は一枚の紙を渡した。

「これは?」

「彼女のことを調べてほしい。あの日、レネッタの部屋にいたメイドだ」

名前はカネラ・ティルマ。中流貴族の娘で、王宮へは侍女奉公のために来ていた。

「承りました。しかしなぜです?彼女は賊に人質にとられ、そのショックからようやく立ち上がったばかりと聞きますが」

「彼女は会議で、二人組はどちらもアリュの人間らしかったと言っていた。しかし片方の男は浅黒い肌だった。ダルネミアが関わっていると知らなかったら、少し肌が浅黒いくらいでダルネミアが関わっているなんて思わなかっただろうからそう言ってもおかしくはない。だが実際は関わっていた」

「……確かに、ダルネミアが関わっていたと知り、浅黒い肌の者をアリュ人らしかった、とはとても言えるはずがありませんね」

彼女なら誰でも部屋に通すことができるし、部屋であったことをいくらでも誤魔化せる。ある意味真っ先に疑われるべき存在だが、特にダルネミアとの接点がみられず、人質にとられた被害者という事もあり調査の対象から外されていた。

「勘付かれたとわかれば逃げるか証拠を消される可能性がある。だが……本当に気が動転していたということもあり得る。とにかく、慎重に頼むぞ」

「はい!」

そう言って急いで出て行くナディスの後ろ姿を見ながら、何かもやもやしたものが胸の辺りに湧き上がってくるのを感じていた。

何か僕は、大切なことを見過ごしてはいないだろうか。


遅れましてあけましておめでとうございます

最近更新が遅れております…

書けても書き終わらないんですよね(。-_-。)

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