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厄介事2

「え、制服を?しかし特に問題はなさそうですが……」

アルは外で待ってると言って一緒に来なかった。

「私ではありません。外にいる私の元同僚に貸していただきたいのです」

「いくらレゲル様とはいえ、理由を聞かせていただかないことには……」

予備とはいえ本物の制服だ。万一変なやつに渡ると厄介なことになるからだろう。侵入されたらたまらない。

「殿下に呼び出されているんです。時間がないので早く貸していただきたい。今日中には返却します」

私が少し焦りながら言ったからか、事務の人が奥に入っていった。



私は借りた制服をアルに渡した。渡された服を見てアルはなんとも言えない表情でそれを二、三回ひっくり返した。

「……何回もこの制服を見てるけど、俺が着ることになるとは」

「いいから早く着ろ、時間がない」

「いいのか?俺は役人じゃねーし……」

「無理言って借りたんだ、そこの木陰とかどこでもいいから着替えろ!」

アルはぶつぶつ言いながらも木陰で着替えて出てきた。

「動きづらいなこれ」

「慣れればいい、行くぞ」

「無茶言うなよ……」

私はすれ違った知り合いとの挨拶もそこそこに早足で北殿に向かった。



北殿に入ると、一人のメイドが私の方に寄ってきた。

他のメイドと違って胸に紋章のようなものが刺繍されている。メイド頭のヘシャだ。

「レゲル様、そちらのお方はどなたですか?役人様ではなさそうですが」

……さすが王宮のメイドを束ねてるだけある。メイドだけでなく役人の顔も把握しているようだ。

アルが若干挙動不審になっている。

「制服は借り物で、彼は精霊院の者です。クラヴィッテ殿下の呼び出しを受けたので連れてきましたが、ふさわしい服がなかったため制服で代用しました」

「そうですか、最近『ゲーテ』の活動が再開したとされているので宮中では警戒が強化されています。レゲル様を疑うわけではありませんが、私も同行させていただきます」

『ゲーテ』は数年前に一度その活動を停止した反王国組織で、最近また活動を再開したという情報は私のところにも入っていた。

「えっ?クラヴィッテ殿下?」

アルは呼び出した殿下の名前を聞いてさらに落ち着きがなくなった。

「出来るなら言いたくなかった。言ったら連れてくるのが面倒になりそうだったから」

「手伝いだって言ったじゃねーか」

「時間が押してる、行くぞ」

私はごねるアルの手を掴んで北殿の階段の方に引っ張っていった。ヘシャも後からぴったり付いてきている。

「俺がなんかしたか?」

「胸に手を当てて考えろ」

なんだかんだ言っているうちに温室に着いてしまった。

「ここってあの温室?はいっていいのか?」

「殿下から許可は得ている」

温室の入り口にいた従騎士のクレイが私の姿を見て温室の扉を開けた。

「レゲルが時間ギリギリに来るとは珍しい」

「準備に手間取ったので遅くなりました」

「にしてもなぜヘシャがここに?」

クレイは私達の後ろに控えていたヘシャに目を向けた。

「彼女はメイド頭として宮中を守るために私達と同行していただけです」

「そうか、ご苦労だった。あとはこちらが引き受ける」

「かしこまりました」

ヘシャは一礼すると元の仕事場に戻っていった。

「入れ、殿下がお待ちだ」

温室に入ると一気に暖かくなり、私は氷精霊に言って私の周りだけ冷やしてもらった。もちろん植物には冷気が当たらないよう気を付ける。

アルは暖かいどころではないようで、あちこちをキョロキョロ見回していた。

少し進んだところに開けたスペースがあり、そこに机と椅子が置かれている。

殿下はそこに座っていた。

「あの人がクラヴィッテ殿下?」

「どこかで見たことがないか思い出してみろ」

とはいえ今日はメガネもしていないし服装もだいぶ違う。

「遅れてしまい申し訳ありません」

「構わない、そこに座れ」

殿下は殿下の前にある椅子を指差して言った。

殿下は私達が座ったのを確認して、どこからかメガネを取り出してメガネをかけた。

「あっ、昨日の夜のレゲルの友達……」

どうやら思い出したようだ。最後は消え入りそうな声だったけど。

「呼んだのは他でもない、昨晩のことだ」

「申し訳ありません!昨夜の非礼は……」

アルはしもどろに謝った。顔面蒼白だ。教えておいていろいろ心の準備とかさせた方がよかったかな。

「そんなことで呼び出したわけではない、昨夜は身分を隠して行ったんだ」

「ならばなぜ私達を呼んだのですか?」

言われてアルを連れてきたはいいが、肝心の目的を聞いていない。

「昨日の話を覚えているか?」

殿下は私にでなくアルに尋ねた。

昨日の話……きっとフーレントース家のご令嬢の話だな。

「えーと……フーレントース家のフェターシャ嬢の……」

「そのことだ」

ああ、やっぱり。偶然とはいえ厄介なことに首を突っ込ませてしまったようだ。


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