一方で5
アル目線です
騎士団に預けていたドラゴンに乗って、俺たちは王宮へ戻った。
ユアリスのドラゴン、コクは疲れたのか王宮の庭に降りて噴水の水を飲むとすぐ眠ってしまった。
俺たちも疲れたかとらいってのんびりしている暇もなく、そのまま大臣や宰相が難しい顔をして集まっていた会議室に通された。
問われるままに質問に答え、追いかけた時の状況について細かく説明した。
そして、俺がレネッタの連れ去られた先はダルネミア帝国だと話すと、信じられないと集まっていた偉い人々は目を見開く。
「ダルネミアだと?ゲーテではなく?」
「理由はわかりませんが確かです。方角も船員の特徴もそれを示しています」
緊張のあまり舌を噛みそうになりながらもなんとか俺は答えた。
「ダルネミアの誰かが彼女を欲しがっているということか?」
「ただの誘拐では済まされない。何か、とんでもない目的があるのでは?」
大臣たちはあれこれと話し合いを始めた。
「軍備について聞き出すためだけなら彼女である必要はない。彼女ほどの精霊使を攫ってまで聞き出すほどの情報を彼女は持っていません。ですが……」
ここで初めてカーレル様が口を開き、珍しく躊躇う様子を見せた。
「人質を取られるということに彼女は弱い。自分のせいで誰かが目の前で傷付けられるのを許せる人間じゃありませんから」
「……それでよく今まで何も無かったな」
思わずといった調子でクラヴィッテ殿下がこぼした。
「精霊が周囲に目を光らせてますし、大抵は人質を取られる前に終わるか、取られても人質も自分も両方助かる道を探して行動しますからね。今回は味方のフリをされ不意を突かれたことと、彼女が反撃できない何かがあったのでしょう」
あいつが反撃できなくなる状況って、いったいどんな状況なんだ?
あの部屋で気絶していた騎士は二人だった。二人で彼女の精霊を封じることができるはずがない。遠くから別の精霊使いが精霊を飛ばしていたとしても、完全に彼女の精霊を抑えようとすれば何人必要になるのだろうか。
「彼女が何かされていたか覚えているか?」
そう問いかけたのはシャヴィム殿下。
誰に聞いているのだろうと思ったら、視線の先には青い顔をしたメイドがいた。
殿下が質問するまで気付かなかった。
「申し訳ございません。あの時は気が動転していて……」
大臣は小さくため息をつき、再びメイドの方を見る。
「念のために聞くが、騎士のふりをしていた二人は間違いなくアリュの人間だったのだな?そうなるとアリュ人の中に内通者か協力者がいることになる」
「それは間違いありません。二人ともアリュ人らしい男でした」
「そうか……」
もう出ていっていいとその大臣はメイドに告げ、メイドは騎士に連れられて部屋を出て行く。
その後ろ姿を見送ると、ふと思い出したようにカーレル様が口を開いた。
「そもそも、なぜ君はフーレントース家の令嬢とあの部屋にいたんです?」
……げ、忘れてた。
書かなければならない時に限って違う話ばかり浮かんでしまう病気のようです。
ストックが……




