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船の上3

レネッタ視点です

変なところに米粒が入り、ゴホゴホと咳き込んでしまった。

こんな性格腐ってそうなのがダルネミアの王族?

それなら何?同じ王族のシャヴィム殿下とクラヴィッテ殿下は聖人か?

てっきりダルネミアの悪徳商人の息子か何かだと思ってた。どこかの誰かに頼まれて拐われたものだと思ってたよ。

「そんなに意外かい?」

「……王族とは何なのか疑いたくなるくらいには」

まあ、あのお二人はお二人で欠点とかありますが、あなたみたいに性根が腐ってるわけではありませんから。

「私の誘拐に王族が関わってるとなれば国際問題どころじゃなくなりますよ」

「誰がこんな古い貿易船に王族が乗ってると考える?この船の船長とは付き合いがあるから快く乗せてくれた。もちろんお忍びで」

サグアノは怪しげな笑みを浮かべて信じられない話をした。

「まだ襲撃のほとぼりも冷めていないのにこんなこと……」

「あまり時間がなくてね。それに君の所は襲撃のごたごたで監視が緩かった」

私自身逃げる気なかったし、警備だって私には必要ないと思われてただろうから確かにその辺りは緩かったかもしれない。

でも、王宮そのものの警備はどうしたのだろう。

いくらなんでも誰にも見られてないなんてありえないだろう。

メイドのカネラだって侵入者の特徴で一人が色黒だったことくらい覚えているだろう。そこから思い浮かぶことはないだろうか。

……今、それを考えてても意味がないか。

「私を攫った理由を教えてください。あとあの時ゼイドが言った言葉の意味も」

私を攫う時、彼は私の耳元でこう囁いた。

『戦争にあなたの家族を巻き込みたいですか?』

始めはただの脅しだと思っていた。でも、彼らが王族とその関係者なら話は別だ。

私のことは戦力としては求められていないだろう。ダルネミアは海上戦で敵はおらず、竜騎士の部隊もあるため空からも戦える。軍の力も大きい半軍事国家だ。

周囲の島国を侵略し属国として吸収していった結果、南の島々はほとんど統一されひとつの帝国となった。

南の島々との間に広大な海がなければ、今頃アリュはとっくにダルネミアに取り込まれているか戦争をしているだろう。

国交ができたのも今から三代前の皇帝が停戦を宣言してからだ。

ダルネミアの進行を恐れた大陸の国々がダルネミアに侵略を諦めさせるために同盟を結びまくったという理由からなのか。まあ、表向きは海を渡ってまで支配するのは無駄だからってことになってるけどね。実際どうなんだろう。

そんなダルネミア帝国が、私を手に入れるためなら戦争を起こすと言う。いったいどういうこと?

「……ダルネミアという国が存続するためとでも言っておこうか。大人しくしていれば命を取られることもないだろう。戦争については、君がこちらに来ないのであれば起こさなくてはならない。そういうことだ」

国の存続?なんでそんなのに私が関わらなければいけないんだ?ますますわからない。

混乱する私にサグアノはまたスプーンに乗った粥を差し出してくる。

「食べろ。餓死されたら困る」

たいして動いてないし、少しくらい食事を抜いたくらいで餓死はしないだろうと言いたかったが、どうせ聞き入れられないだろうから言わなかった。

「運んだ時に思ったんだが、細すぎるだろう。もっと女らしくなろうとか思わないのか?」

少しずつ粥を飲み込んでいると、サグアノが余計なことを言った。

「女らしさが出たら困ります。それにもう手遅れです」

変に太って体型が変わったら女だということがバレるかもしれない。まあもうバレてますがね。

精霊たちはさっきからずっと私のことを不安げに見ている。何もできないことが歯がゆいのか、自分自信を嫌悪するような目だった。

彼らにこんな顔をさせたのは私だ。どうしてあなたたちは私を選んだの?

私が攫われたのは精霊のことが理由だろう。そして今はそれを封じている。

でも、このことと国の存続が何か関係があるのだろうか。封じることができるのだから、国を守ることの役に立たない。

「そういえば、壁を張っているのは誰なんですか?」

私の精霊の動きを封じている神精霊の壁、この船に乗っているのなら会ってみたい。

攫われた時に精霊が何もしなかったし、あの時の騎士のふりしてたゼイドともう一人のどちらかだと思うんだけど。

「ああ、それはこいつだ」

そう言ってサグアノが指差したのはやっぱりゼイドだった。色黒のゼイドにわざわざ騎士のフリさせたのはこれが理由か。

「いったいどういう仕組みなんですか?」

神精霊の壁だけでこれだけの効果は出ないはずだ。本人の資質もある程度関係してるんだろうけど……

「それは私にもわかりません。レネッタ様の力を説明できないのと同じです」

それを言われたら言い返せない。

でも、私の精霊を抑えられるなら私よりよっぽど力があるんじゃないの?ダルネミアの存続についてこの人に任せればいいんじゃない?

そう言ってみると、ゼイドは首を横に振った。

「ダルネミアからアリュまでの航海の間、ずっとこの部屋に壁を張っていました。王宮でレネッタ様の精霊を抑えたときはしばらく動きを抑えるので精一杯で、その日の力を全て使い果たしました」

確かにあの時は状況が理解できず、精霊の動きまで鈍ったから怯んでたんだよね。まさか私の精霊が抑えられるなんて思わなかったし。


免許の合宿にれっつごーしているはずです(未来日記)


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