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一方で2

アル視点です

しばらくその黒い影が何なのかわからなかったが、近付いてくるそれをよく見ると、黒光りする鱗が見えた。

「ドラゴンか!?」

ここまで近ければさすがにわかった。ただ、ここまで近くでこのサイズのドラゴンは見たことがなかった。レネッタのドラゴンのレルチェは見たときまだ雛だったし。

山賊らしき男たちもその迫力に腰を抜かしていた。

俺たちも暴れる馬を抑えることに必死になっていて、ようやく落ち着いたときには、黒いドラゴンは道の真ん中に着地していた。

そしてドラゴンの上から降りてきたのはあの時の男、ユアリスだった。

「彼女を追いかけてるの、あなたの精霊なんですよね?乗ってください、こっちの方が早いんですから」

「あ、ああ」

その剣幕に押されたわけではないが、俺は急いで馬を降りる。

山賊らしき男たちは尻もちをついている二人以外は散り散りになって逃げた後だった。

「これ腰に巻いて、乗ったら俺のと繋げてください」

素っ気なくそう言い残し、ユアリスは身軽な動きでドラゴンの上に登っていく。

とりあえず言われた通り渡されたベルトを腰に巻き、夢中になってドラゴンの背に登る。

ドラゴンに乗るなんて生まれて初めてで、登ったはいいがどうすればいいのかわからない。それに馬の上よりはるかに高いドラゴンは背の上にいるからか、手が震えてうまく留め金を止められない。

「できましたか?」

かなり焦った口調でユアリスは俺を急かす。

なんとか留め金を留め終え、念のため外れないかを確認した。

「終わった」

「舌噛まないように歯を食いしばってください。行きますよ」

そう言ってユアリスがドラゴンに合図を送ると、腹の底が持ち上げられるような感覚と共に、一気に地面が遠くに離れていった。

思わず目を閉じる、次に目を開けた時にはとっくにドラゴンは森を超えていた。

「どっちにいますか?」

飛行が安定してきたところで、ユアリスがそう聞いてきた。

「南東の方。たぶんウカナだ」

ウカナは港町で、航路での輸出や輸入が盛んな場所だ。外国との交流も盛んなため、様々な国の文化や人の入り混った賑やかな町だった。

「ウカナ?なんでまたそんなところに……彼女を狙っているのはゲーテだろう?」

「知りませんよ!それよりどうして俺らの居場所が分かったんです?」

応援部隊はあとでというのは聞いていた。ドラゴンで来たとして、ここまで早くなぜ来れたのか……

「俺は精霊使いだから、精霊での情報伝達も担当してる。ちょうどこいつ……コクのところに行こうとしてたら連絡が入った。あなたの向かった方向を聞いて、森を通るならこの道路を使うと思ったので」

ああ、そういうことか。王都から森を抜ける道で一番よく使われるのがあの道だ。それなりに広い道だから上空からでも見つけやすかったはずだ。

でもよくこんな高さから見つけられたな。まだ下を見ると背筋がゾッとする。

気を紛らわそうと遠くに目をやると、海岸と灰色の町が見えた。あれがウカナだ。

港の方には大型船がいくつも停泊し、今も何隻か貿易船が出航し、その代わりのように別の船が入ってきていた。

「どこに降りるんだ?ウカナにこんなでかいドラゴンが着地できる場所はないだろ」

ウカナ周辺は人家が密集していて、とてもドラゴンが着地できる場所ではないし、その周辺の平地はほとんどが畑で、しかも今はちょうど作物が育つ時期、下手に平地に着地したら農家に被害が出る。

かといって手前すぎても降りたら徒歩だ。着くのが遅れてしまう。

「海だ。こいつは泳げるから港の外れくらいに降りてもらう」

「え、こいつ泳げるのか?」

「この種は元々水辺に住んでいる。竜舎の池でも泳いでるし、そういう訓練もしている」

話には聞いていたが、竜騎士というのはやはり特殊な職のようだ。

確かにこういうことができるなら騎士が憧れるのも当然だ。ドラゴンに乗って空を飛び、颯爽と現れる、さぞ女性受けもいいだろう。

それを思うと、自分がどれだけ平凡なことか。

俺だけ何も言えてないし、あいつにとってもどーせ付き合うなら俺なんかよりこっちの方がいいんじゃないか……?

俺に勝ち目はない、ならせめて聞きたかった。

「なあ、どうしてあいつのことが好きなんだ?」





予約投稿しつつ、前期試験の接近に焦りを覚えています

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