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闖入者2

「今の状況がわからないって顔してるね。まあ当然か」

男は私が寝転がっているベッドに近付いてきて、足の辺りに腰を下ろした。付き人っぽい人が微妙な顔をしている。付き人がいるってことは、この人は偉い人なんだろうか。

まあこっちの言葉がここまで普通に話せるくらいだし、高い教育を受けてきたんだろう。

「ああ、君の精霊は大人しくしてもらうために精霊用の壁を張ったから様子がおかしいかもしれないけど、外なら影響はなくなるよ。まあ出られないようにしてあるから着くまで我慢してほしい」

着いたところで自由になるようには思えないんだけど。それに……

「壁?」

精霊相手に壁を張れるのは神精霊しかいない。しかし、神精霊の壁は本当にただの精霊に対する壁で、精霊の動きを阻害する効果はほとんどなかったはず。そんな例は報告されたことはあるにはあるが、ここまでの効果はない。

「君のような人間が神精霊使いにもいるってこと。いわゆる……常識から逸脱した人間?ああ、異常体質?」

いや、どうして最後が疑問形になってるんですか?合ってますよ、たぶん。一応理解はできました。別の意味に聞こえる気がするのは気のせいですよね。

「まあしばらく薬で話しにくいだろう。その間こちらの話をしようか」

そう言って男は私の顔を覗き込む。

男の口の端が上がっているのがなんだか気に入らない。

「……自己紹介がまだだったね。僕はサグアノ、彼は僕の従者のゼイドだ」

そう言って男……サグアノは笑い、従者のゼイドは私に向かって軽く会釈をした。

「本当はこんな風に無理やり連れてくる気はなかったんだが、こっちの読みが外れてね。まさか減給と始末書だけとは……アリュの王宮はいったいどうなってるんだ?」

それは私の処分のことだろうか。男と偽って役職に就いていたことへの。

私の男装がばれたのはあの襲撃の怪我のせいだ。まあオスルがそのうちバラすだろうってわかってたから、いずればれるはずだったんだけど。

ん?じゃあオスルは彼らに私のことを話したのか?でもゲーテのカイも、それで脅してきた。

「お察しの通り、アリュの反政府組織のゲーテはダルネミアと繋がっている。君の秘密があの襲撃で露呈すれば、どれだけ襲撃で功をあげても辞めさせられる。居所がなくなったその時に君を連れてこようとしたんだ」

「……私を、辞めさせたかったなら、噂でも流すか適当に手紙でも送ればいいのでは?」

わざわざ襲撃なんてして、おおっぴらに行動するよりいいだろう。人手もいらないし、証拠も少なくて済む。

「それでは王家にダメージを与えられない。王宮の混乱と不信感を産み、あわよくば王族を殺すというゲーテの考えがあってね。まあ、こちらは彼らの手助けをすれば君が手に入ると、利害の一致でこうなった。それにアリュで活動するゲーテが君を狙っていたという事実から、君が行方不明になっても捜査が他国のダルネミアに向くことはない。仮に向いたとしてもろくな証拠もない」

ゲーテの手助けをすることでサグアノたちは私を手に入れ、ゲーテはサグアノたちの協力で王家に大きなダメージを与えられる。確かに、辻褄はあう。だが、そこまでしてどうして私が欲しいんだ?

尋ねようと口を開くと、扉が開いて誰かが入ってきた。

早口にゼイドに向かって何かを言い、それを聞いていたサグアノは大きくため息をついて何かを呟いた。

「……話の途中にすまない、用事ができた。まあ、あと最低十日は船の上。時間はたっぷりあるし、ゆっくり知り合っていけばいい」

そう言ってサグアノは部屋を出ようと扉へ向かう。

「あ、そうだ。ここに君がいることはこの船の乗組員にごく一部しか知らない。だから……」

無防備な私に対する慰めだろうか。

別に、心配されなくてもこんな色気も胸も女らしさもない私を誰が襲うというのだろうか。

精霊に頼れない不安はあっても、そういう自信はある。

考えたら悲しくなってきたのと同時になんかムカついた。

なんなんだあいつ、人を励ましてるのか遠まわしに馬鹿にしてるのかどっちなんだ。それにそれは誘拐した人間に言うことか?

「またそのうちくる」

サグアノはそう言って、ひらひら手を振り部屋を出ていった。

主人公が妙に誘拐に巻き込まれているなぁ

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