闖入者
視点が主人公に戻ります
目を覚ますと、知らない場所にいた。
華やかな王宮とは全く違う、焦げ茶色の所々修繕の痕が見える木の天井が見える。
眠っていたベッドは木に厚めの布を敷いただけの造りで、硬くて痛い。掛けられていた毛布も薄いし肌触りもゴワゴワしててよくない。
全身だるくて動けない。前に闘技会でイグルドに嗅がされた薬と似ている。
いつも通りリハビリを終えて寝ていたら、いきなり王宮の兵士になりすました侵入者が入ってきて、カネラが人質に取られたんだっけ。
もちろん反撃したが、侵入者の片方が神精霊使いだったようで強固な壁を張られた。
私の精霊たちなら砕けるが、すぐは壊せないためその動きの間にカネラに何かあっては困る。
それに、脅しのためかどうかはわからないが、私の耳元で囁かれた言葉が妙に引っかかり、動くことができなかった。
結局、侵入者の指示に従って着替えさせられ、車椅子に乗って部屋の外に出たら変な薬を嗅がされた。
そして今に至る。
起きたけど誰も来ない。まあ起きたといっても目を開けただけだけど。
精霊はいるにはいるが、動きがぎこちなく、私が起きたのに気付いて疲れた様子ながらも嬉しそうにしてくれた。
なぜ彼らが疲れた表情なのかはわからないが、近くにいると思うと少し安心する。
今の状況についてもう一度考えてみようと目を閉じてしばらくして、体が酒を飲んだ時のようにふわふわ揺れているのに気付いた。
自分が動いているわけではない。寝転がってるし。薬の作用だろうか。
そう思ったところで、今までよりさらに大きく体が揺れた。
……ここ、まさか船の上?
船は何度か乗ったことがある。アリュ王国の南のワムアス海、その向こうにあるダミネルア帝国に行くときや、同じ大陸でも海路の方が早いエード王国に行くときなどにカーレル様について何度か乗った。
あまり気持ちのいいものではなかった気がする。現に今、なんだか気持ち悪い。
馬車とかで酔うように、船でも酔うそうだ。外の景色を見るのがいいらしいけど、動けないしそもそも窓がない。
「ああ、起きた?」
木の擦れ合う音と共に誰かが入ってきた。
声的に男だろう。ただ、言葉の発音やイントネーションが微妙に違った。
「サヴァ語を話すのは慣れてない。発音とかは気にしないでくれ」
サヴァ語は大陸の共用語だ。それを話し慣れていない人物が乗っていて、しかも私は船の上。
「ダルネミア……?」
口も動かしにくいが、なんとか国名だけは言うことができた。
「正解。さすが宰相の補佐官だ」
いや、少し考えればわかりますけど。そう言いたかったが面倒なので止めておく。
目だけ動かして入ってきた男を見る。
そこにいたのは南の国であるダルネミア人らしい褐色の肌に彫りの深い顔立ちの若い男と、四十くらいの褐色の肌だがそれほど顔の彫りは深くないおじさんだった。
「……あ」
おじさんの方、どこかで見たことがあると思ったらあの騎士のふりしてた男だ。
褐色の肌といっても、よく陽に焼けたらアリュの人間もそういう色になる。だからあの時はそこまで違和感を感じなかった。
それにしても、なぜダルネミア人に私が狙われたんだろうか。軍備のことを聞き出したいなら、わざわざ怪我して動かしにくくて国でなにかと話題になっているであろう私を攫うより、騎士団とか他の人間を攫う方が楽だと思うけど。
精霊についてなら私は使えるけど、それ以外は何もない。
それに今、私の精霊たちの様子がおかしい。
いったい何がどうなっているのだろうか。
妙に冷静




