友人の来訪3
「まだカーレルは来ていないのか?」
そう言ってシャヴィム殿下は書類の束を近くにあった丸テーブルの上に置く。
アルとユアリスは突然の王族、それも王太子の登場に、驚きのあまり固まった。
しばらくして我に返ったのか、慌てた様子で王族への礼をし、シャヴィム殿下の言葉を待つ。
「ああ、そう気にするな」
軽い調子でシャヴィム殿下が言うと、ホッとしたのか二人はゆっくりと頭を上げた。
誰かを探すようにあちこちを見回している殿下に、カネラがおずおずと声を掛ける。
「私が呼んで参りましょうか?」
「いや、そのうち来るだろう。大丈夫だ」
そう言って殿下は椅子に座り、パラパラと書類をめくり始めた。
しばらく黙っていたアルとユアリスは小声で何か言い争いを始める。
そんな様子を、私は少し離れた所で見ているような、そんな感じで眺めていた。
「ん、どうした?レネッタ」
ぼんやりとしていると、書類から顔を上げた殿下から声をかけられた。
「あっ、その……」
カーレル様がここに来るんですか?
そう、聞きかった。
言い方は悪いけど、カーレル様は私の上司なのに一度もここにきてくださらなかった。忙しいのかもしれないし、怒ってるのかもしれない。
ついさっきそのことについて考えていたばかりだからかもしれないが、何となく会うのが気まずい。
「安心しろ、彼はこの状況を楽しんでいる。怒ってはいない」
私の表情から察したのか、殿下は私を落ち着かせるようなゆっくりとした口調で言う。
そしてちらりとアルとユアリスを見ると、微かに笑みを浮かべ、再び書類を読み始めた。
どんな顔をしてカーレル様に会えばいいのか、そんなことを考えてどれだけ時間が過ぎたのだろう。シンと静まり返った部屋に軽いノックの音が響く。
慣れたようにカネラが扉に向かい、ノックの主……カーレル様を部屋に通した。
いつも通りの何を考えているのかよくわからない表情に仕草。それが却って怖い。
カーレル様はベッドに横になったままの私を一瞥すると、部屋に集まっていた面々の顔を見た。
「揃っていますね。殿下、お忙しい中お越しいただきありがとうございます」
「構わん。で、どうするつもりだ?」
「そうですねぇ……」
この二人の会話からするに、殿下とアルとユアリスは全員、カーレル様に呼ばれてこの部屋に来たことになる。
なぜこの三人がここに呼ばれたのだろう。
「あの、一体俺……私達はどうしてここに呼ばれたのですか?」
私の疑問をアルが代弁してくれた。
待ってましたとばかりににこりとカーレル様は口の端を上げて笑う。そして……
「レゲル君もといレネッタ君の代理の第二補佐官を決めるために、ね」
子供のような笑みを浮かべ、カーレル様はあっけらかんとそう言った。
後書きに
何を書くのが
よいでしょう
俳句風(笑)




