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報告

「えっ、結局私の処分はどうなったんですか?」

会議の内容をあらかた話し終えて一息つくと、レネッタは少し慌てた様子で言った。

「五年間の減給と始末書だそうだ」

「……は?」

よく聞こえなかったと言わんばかりの表情でじっと私の方を見た。

この反応は当然だと思う。

性別を偽って国の中心近くで働いてきたのだから、それ相応のことは覚悟していたのだろう。

とりあえず現実だということを伝えるため、もう一度同じことを伝えた。

「く、クビにならないんですか?」

そう言うレネッタの表情は、初めて見るくらいポカンとした間抜けな顔をしていた。

あの『レゲル』でも、こんな表情を見せるのかと少し驚いた。

「レゲルのころの功績を考えれば妥当だと、ほぼ全員一致の結論だ」

反対した一部の人間については言わなくてもわかるだろう。

「それで全部無しになるんですか?」

「とりあえず上の方の決定はそうだ。国民も、騙していたことへの怒りよりも驚きの方が上で今のところはあなたを辞めさせろという動きにはなっていない」

これはおそらくレゲルへの国民の信頼と尊敬、レゲルの人徳といったものの働きが大きい。

というか、一部女性の間でレネッタの評価が跳ね上がっていたりする。

男性中心の傾向の強いこの国で、女性でも平民でも関係なく出世できるということの証明になったからだろう。

「失礼します」

今の状況について話していると、ノックと共に一人の男が入ってきた。

「イグルド……様?」

誰だと訊ねる前に、レネッタが男の名前を呼んだ。どうやら知り合いらしい。

「ああ、殿下。お話の邪魔をしてしまい申し訳ありません。彼らがどうしてもと言うので」

……彼ら?

イグルドとかいう男の口振りから、複数人であることはわかるが、今のレネッタに面会できる人間はそう多くないはずだった。

どういうことだろうと思っていると、扉の陰から二人の少年と三人の少女が飛び出してきた。

レネッタのベッドに飛び付くようにして、その五人の子供はやって来た。

「お姉ちゃん、大丈夫!?」

「怪我したんだよね」

口々にレネッタを心配する言葉をかける。

レネッタの妹と弟か。

しばらくの間ぼんやりとその様子を見ていると、不意に妹のうちの一人が振り向いてこちらを見た。

少し遅れて横にいたもう一人の妹が振り向いた。

横の顔と瓜二つな顔によく似た背格好、双子だったのか。

そして二人ともほぼ同時にその可愛らしい顔を硬直させた。

「どうかした?」

レネッタが不思議そうに双子に訊ねる声がしたが、双子は聞こえていないのか固まったまま微動だにしない。

「こ、この人……方?誰……?どなた……」

ようやく口が動くようになったらしく、完全に混乱した様子で言う。

「この方は……」

「シャヴィムだ。君たちの姉の上司」

上司……うん、上司みたいなものだろう。

レネッタの紹介を遮って少しぼかして言ってはみたが、どうなのだろう。

「でもさっき殿下って、イグルド様が」

信じられないという表情で、レネッタの妹と弟は全員私の方を凝視する。

ただでさえ緊張しているであろう彼らを、余計緊張させた

「私のことは気にする必要はない。とりあえず話は終わったから、私は行く」

せっかくの再会に、私がいては気になるだろう。

せめて安心させようと、妹の方を見て微笑んでみたが 、一人がもう一人の後ろに隠れてしまう。

そんなに威圧感があるのだろうかと思いながら、私は部屋を出た。


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