殿下目線2
部屋に戻り彼の容態についての報告を待つ。
本当は目が覚めるまでいたいくらいなのだが、いてもたいして助けにはならないだろうし、神官や医者も集中できないと言われてはなにも言い返せない。
普段なら寝ようとするような時間だが、こんな日に寝られるはずがない。
もっとも、さっきから被害状況の報告がひっきりなしに入ってきて、その書類に目を通したりと、寝ている暇などないのだが。
その時、ノックの音がして私は顔を上げた。
騎士のエザムが扉の方へ向かい、誰が来たのかを確認しに行った。
自分の従騎士であるサフェスは襲撃の時に怪我をしたため、今は休んでいるところだ。
彼とレゲルだけではない。かなりの数の人間が怪我をし、すでに何人かは死亡したという報告も入っている。
これからのことを考えると、いろいろと不安だ。
やがて…エザムが戻ってくる。
「アスル神官です。レゲル様のこと……?だそうです」
なぜそんなに自信なさげに言うのだろうか。
「……通せ」
「失礼します」
医者の一人らしい男が一礼して部屋に入ってきた。
「レゲルの容態は?彼は無事か?」
「えー、あの方のことについてなのですが……」
歯切れの悪い口調で男は言う。なぜ言いづらそうにしているんだ。
「早く言え、レゲルに何かあったのか?」
「と、とりあえず出血は止まりました。しかし 、その……」
「言いたいことがあるならはっきり言え」
血が止まったとは言ったが、止まったからといって大丈夫というわけではない。
男は少しためらったあと、意を決したように口を開き、衝撃的な質問をした。
「あの……レゲル様はじょ、女性ですか?」
「はぁ?」
頓狂な声が出る。何を言っているんだ?レゲルは男だろう。そんなことそれこそ国民全員が知っていることだ。
「何を言っている?彼は彼だろう」
「しかし汚れていたので、おっ、お召し物を取り替えようとしたところ、あのっ、そのっ……」
男は真っ赤に赤面していた。いや、男の反応の意味がわからないほど私は鈍感な人間ではない。何があったのかくらい察せる。
ただ、信じられないだけだ。
「もっ、もちろん着替えはすぐに、女性にさせました!決して私は着替えさせてなどおりません!」
いや、慌てるところはそこではないだろう。
まあ、彼は相当気が動転しているんだろう。こんなとんでもないことを伝えさせられば誰だってこうなる。
「もういい。彼は……じゃない、彼女はどこにいる?」
「客室です。あれほどの怪我でしたので他の方と同室にするわけにもいかず、そこに……」
それを聞き私は立ち上がった。
「ど、どちらへ?」
「彼女のところだ」
レゲルが女だったなどということがまだ完全に納得することができないから、実際に会って確かめたかった。
「お待ちください。まだ昏睡から覚めておりません。それに……」
彼が何か言いかけたところで、再びノックの音がした。
エザムが誰かを確かめにいき、一人の官吏を連れて戻ってくる。
「これから臨時会議が開かれます。急いでお向かいください」
あちこちこれと同じことを伝えて回っているのか、彼の肩はわずかに上下している。それだけ緊急ということか。
「……すぐ向かう」
臨時会議か……
おそらく議題にはレゲルだった彼女のこともあがるだろう。
彼女が身を呈して守ってくれたように、私も出来る限りのことをして守らなければ。
バレちゃいました(⌒-⌒; )




