目が覚めて
ハッと目を覚ますと、私は見知らぬベッドに横になっていました。
身体を起こそうとすると、腕と足、そして背中の鈍かった痛みが鋭いものに変わり、もやもやしていた記憶が急にはっきりとしたものになります。
っていうか、いつの間に背中を?それにここは……
『主人!もう目を覚まされないかと……』
『どうしてあのような無茶をなさったのですか』
私が目を覚ましたのに気付いて、精霊たちがわらわらと私の周りに集まってきた。
全員安心したように笑っている。
「……心配かけてごめん」
その表情を見て私はなんだかとても申し訳なくなって、思わず声に出してしまった。
精霊たちは少しの間不思議そうに顔を見合わせると、やがて満面の笑みを浮かべて私に笑いかけてくれる。
その時カチャリという扉の開く音がして、私たちは一斉にそちらに目を向けた。
王宮のメイドらしき女性が扉から顔だけ覗かせて、私が起きているのを確認してすぐにどこかへ行ってしまった。
とりあえず、カイたちに連れていかれることなく助かったらしい。それはわかった。
でも、殿下はご無事だろうか。それにカーレル様も他の人も。
不安になり、私は思わずベッドのシーツを強く握り締めた。
「はぁ……」
落ち着こうと大きく息を吐いたとき、再び扉の開く音がして、私は首を動かしてそちらを見る。
「……殿下、ご無事だったんですね」
神官らしき人を引き連れた殿下が入ってきて、私はほっと息を吐く。
『主人のお怪我の元凶め』
『よくもノコノコとやって来これたものだな』
『不快でしたら、すぐにでも叩き出します』
精霊が殿下に向ける目線はとんでもなく冷たいものだった。
すると、なぜか殿下は頬をひきつらせて俯く。
あれ……?殿下って精霊と契約してたっけ?
とにかく静かにするように伝えると、精霊たちは殿下に冷ややかな目を向けたまま口を閉じる。
「あの、カーレル様は……」
精霊たちが静かになったところで、私は殿下に尋ねた。
そう言った自分の声が震えているのがわかる。
もし、カーレル様に何かあったら私のせいだ。
私がうまく感情をコントロールできず、精霊が私の方へ戻ってきたから……
どういうわけか、この場にカーレル様は来ていない。何かあったとしか思えなかった。
……それとも、ずっと騙してて、会いたくもないということかな。
「すぐ答えたいところだが、いくつか聞きたいことが……」
「ご存知なら教えてください!」
……言ってすぐ不味いと思った。殿下に向かって、怒鳴ってしまった。
何か言われると身構えたが、殿下は何度か瞬きをしただけで、少しして口を開いた。
「……彼は無事だ」
「無事……」
身体中の力が一気に抜けた。
じゃあ、なんでここにいらっしゃらないんだろう。
私は起こしかけていた身体を下ろしてぐったりとベッドに横たわる。
「……聞きたいことというのは何ですか?」
あまり考えたくなくて、先ほど殿下が聞きかけたことを聞いてみる。
「あなたは、女性で間違いないか?」
とても言いづらそうに殿下は言う。
それと同時に、私の頭の中も一瞬真っ白に染まった。まあ、よく考えてみたらそうか。
あれだけの怪我だし、着替えくらいさせるよね。実際、今私が着てるのは白いバスローブっぽいものだし。
しらばっくれても無駄か。
「はい」
私は素直に認めることにした。
そう言うと殿下は大きくため息をついて下を向く。
「……名前は?」
「レネッタです」
聞かれると思ったので即答した。どう呼ぶか困るだろうし。
答えたのに、なぜか殿下は黙っている。
「どうかしましたか?」
「……いや、何でもない。ただ、普通の名前だったなと」
悪かったですね普通で。
っていうか、どんな名前を期待してたんだ。
「では……レネッタ、昨日の会議であなたの処分が決定した」
……それはそうだろう。
さすがに殿下助けたから無罪放免、なんてことは期待してません。
覚悟はできてますという意味で黙って頷くと、殿下は私が眠っていた間の会議について話しはじめた。
しばらく更新が出来なくなっておりました
久しぶりの投稿です
生暖かい目で見守ってやってください
進学先は無事決まりました
あとは書類に不備がなければ大丈夫です……たぶん




