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襲撃

「カイ!?」

小さな人影と目が合う。

そこにいたのはあの時、年末に地元ハセ区に帰省した時の誘拐事件で私が助けた男の子、カイだった。

事件の後、戻るところがないからと、ハセ区の騎士団に預けられていた、精霊を見ることができる特殊な目の持ち主でもある少年で、今は騎士の見習いのようなことをしているはずだ。

辺りは騒然としていて、カイ以外にも誰かがいるようだ。

私は渋る火と氷の精霊を無理やり言い聞かせてカーレル様の方へ送る。

本来の私の役目はカーレル様を守ること。それを忘れるわけにはいかない。

それに精霊が見えるカイの前で、精霊を使うのはよくないように思える。それなら、カーレル様を守らせておくほうがいい。

生暖かい液体が手を濡らすのを感じながら、私はじっとカイを見る。

でも、どうしてカイがここに……?

それもあるけどシャヴィム殿下は無事なんだろうか。

パッと殿下の方を見ると私が突き飛ばしたせいだろう、壁にぶつかったようで、壁にもたれ掛かった状態で気絶している。

痛む自分の腕に目をやると、かなり酷い刀傷ができていた。

服がすっぱりと切られ、血が止まりそうにない。

「レゲル様、そこを退いてください」

冷えきった目で、カイが私を見ていた。

彼が私に突き付けている剣には血がついている。私のものだろう。

「上の人達にも、あなたは必ず生かして連れてくるよう言われています」

どうやら、カイはどこかの組織に属する人間だったようだ。

「……嫌だと言ったら?」

私は隠し持っていたナイフを取り出して使える方の手……左手でそれを持った。

利き腕ではないが、この状況では仕方がない。

「どうしてその男を守ろうとするんです?」

「どうしてって、目の前で人が殺されるのを見るのは嫌ですから」

それに、ここにいるのは殿下だ。ここで死なせるわけにはいかない。

カイの動きに注意しながら、一度辺りを見回してみる。

「……魔物?」

私は一瞬自分の目を疑った。

会場で暴れている黒い影の目が灯りに照らされて赤く輝いているように見えたからだ。

そういえば、アルペの離宮でのパーティーの時の襲撃はゲーテの仕業で、使われたのは魔物。

違うのは今、この会場には魔物だけでなく、カイの仲間らしい武装した人間もいることか。

「どうしてって顔をなさってますね。ええ、アルペの時に魔物だけでは失敗しましたから」

「……じゃあ、カイはゲーテの一員ってことか」

前にカーレル様の幼馴染みのイグルドが言っていた、数年前に別れた方のゲーテ。

国を守るための組織が、国を守るために国の組織を潰そうと考え変化したもの。

「ゲーテ、と名乗りたいところですが、本家のゲーテは僕たちのことを認めてくれていません」

その言葉に私が黙っていると、カイは再び剣を振った。

「ッ!」

「……国を思っているんですけどね」

カイは剣に力を入れたまま続ける。

「もう一度言います。こちらに来て頂けませんか?僕たちはレゲル様に危害を加えることはしません。むしろ、歓迎します」

カイは私の短剣を払って、剣先を下に向けた。

「私の力は、そんな風に使うものじゃない。断ります」

「……僕が、いや、僕たちがレゲル様の隠し事を知ってるとしても、ですか?」

そう言ってカイは悪戯っぽく笑う。

その笑みを見て、私の脳裏にある人物の名前が浮かんだ。


このころサイトにアクセスしてるか謎ですね(苦笑)

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