表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/276

過去8

「遅いよ!」

ホテルの部屋に戻ってくると、長いこと待たされていたらしいティグルスが言った。

「すみません。話が長引いたので……」

相手が貴族だということもありいろいろとややこしいので、説明することは多かった。

「でもこれで終わりなんだよね。こういう格好をできるのはいいけど、これ可愛くない」

そう言ってティグルスは被っていたカツラを取り、それを持ってきていた箱の中に仕舞う。

金髪の中から、カーレル様と同じ色の茶髪が出てきた。

「そんなにじろじろ見るな。恥ずかしい」

だって、かれこれ数日同じ光景を見てきたけど、こんな見事に変わるものなんだなと感心してるから。

私なんてほぼこれが素だし、カツラ被ったところでティグルスに負ける気がする。

「どうやって全部自分でやれるようになったんですか?」

「何回もやったから。少しでもおかしいと気になる」

化粧を落としながらティグルスは言う。

少し顔色が悪く見えるようにしてもらっていたので、化粧を落とし終えると子供らしい肌が出てくる。

顔を洗ってさっぱりしたティグルスは、私の横のソファーに腰かけて大きく伸びをした。

「あの時は本当に怖かった。襲われるかもとは言われてたけど、まさかいきなりで、驚いた以外はなかったからいいけど。寿命が縮んだらどうするの。それにストレスは肌に悪い」

確かに無事だったからよかったとはいえ、今思えば危ない作戦だったなぁ……

「ん……?その傷どうしたの!?」

傷?ああ、オスルと戦ったときに頬をかすった傷か。きれいに洗って消毒したし、そんなに深くないから目立ってないと思ったんだけど。

ティグルスは信じられないものを見るような目で私を見てくる。

そんなにまずい場所にできたっけ?それとも他に怪我したっけな……?

「ここ以外に傷ができてるんですか?」

「そんなわけないだろ!っていうか、そんなとこに傷を作っていいわけがないだろ!?」

なんで私はこんなにティグルスに怒られているんだろうか。口調も大いに荒れてるし。多少の怪我は覚悟の上だったんだけど。

「ちょっと前から思ってた。黙ってたけど、レゲルって男じゃないんだろ?」

「へ……?」

今、何て言った?

「なんか事情があるんだと思って聞かなかったけど、レゲルって女なんだろ?自分の肌くらい大事にしろよ」

「どうしてそんなことを?」

「ここ何日か一緒にいて、何か変だと思った。最初は気のせいかと思ったけど、やっぱりそうなんだよな?」

まあ、否定しないけど。否定したら脱いでみろとか言われそう。

にしてもなんで気付いたんだろう。一緒の部屋とはいえ、それなりに気を付けてたんだけど。

「どこか変でしたか?」

「私は普段から女性はよく見てきた。動きとかいろいろ。だから変だと思った」

「動き?」

これでも何年かずっと男装してきて自信あったのに。

「たぶん私だから気付けた。普通はわからない。私以外は知らないこと?」

「ええ、まあ……」

オスルのことが一瞬頭をよぎった。いずれ彼は周囲の人間に言うのだろう。

だが、おそらくそれは今じゃない。

ここで言っても、私の事情もあり、世間の受け止め方はそこまでひどくはならない。

この事件が忘れられかけたころ、このことを暴露するつもりだろう。

「もし知られたらどうするつもり?レゲルは有名人なんだからすぐ広まるよ」

「何かしらの罰は覚悟しています」

「覚悟って、でもレゲルくらいの精霊使いなら女としてもできたのにどうして……」

「女として仕事をすることが怖かった。それだけです」

まさかこんな出世が早いなんて思ってなかった。

無理だと思ったらやめようと思って仕事をしていたら、補佐官になって、戻れないところに来てしまった。

「カーレル様には責任が及ばないようにします。ですから、今は言わないでいただけませんか?」

「言わないよ。言わないけど、レゲルはそれでいいの?っていうか、レゲルって呼んでるけど、これ本名じゃないんだよね」

「いいんです。今さら普通の生活に戻れる気がしませんから」

世間一般からすれば普通ではない生活も、私にとっては当たり前のことなんだから。

「私の名前はレネッタです。名前は普通でしょう?」

「レネッタか、そうだね、普通だ」

そう言ってようやくティグルスの強張っていた表情がやわらいだ。

世間はハロウィンですね(*´ω`*)


とりっくおあとりーとって言ったらお菓子もらえるかな……(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ