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過去7

私が降り下ろした短剣は、オスルの長剣で受け止められる。

「……なぜ精霊に頼らない」

私の攻撃を受け止めながらオスルは尋ねた。

「私自身が戦わないと意味がないからですよ」

これは、昔の幼い私に打ち勝つため。昔私のせいで死んでしまった人を守るための戦い。

だから、精霊たちの力は借りない。オスルの精霊を押さえて、そしてその協力者を黙らせる。

きっと彼らがオスルの犯行の後始末をしていたのだろう。

突然、私の攻撃の隙をついてオスルから鋭い一撃が飛んできて、慌てて避ける。

……少し頬を切った。

静かな路地裏に、金属と金属がぶつかり合う高い音が響く。

決着が着きそうにない。その焦りが隙を作った。

直撃は免れたものの、私は尻餅をついて転んでしまった。

オスルの冷ややかな目が私を見下ろしている。

「あなたは愚かだ。精霊に頼ることもせず、女が男に勝てると本気で思っていたのか」

全く感情のこもっていない声で言う。

私は黙って短剣をオスルに向かって投げつけた。

眉間に飛んでいった短剣は、その剣であっさりと弾かれる。

「愚かなのはあなたの方です」

誰かが走ってくる足音が聞こえてくる。

誰かが通報したのか、私が呼んでおいた騎士団の人か、とにかく、一人や二人ではない足音がこちらに近付いてきた。

「ご無事ですか!?」

そう言って一人の騎士が私とオスルの間に割り込んだ。

ここに来てすぐ、リュシ区の騎士団に行って、合図をしたときに来るように言った。

警備や巡回のルートを確認して、案の定この辺り一帯はそれらが手薄だったので、事件が起こることを示唆して、すぐ来れるようにしておけと。

「まさか、オスル様……?」

秘密裏に動きたいから、ごく一部の人間だけに伝えた。

騎士団外に絶対に伝わらないよう、細心の注意も払って、すべて隠れるようにして動き続けた。

戦って絶対に勝つ必要はなかった。時間さえ稼げれば、あの時だってお姉さんは助かった。

私はただ、オスルを止めることができればそれでいい。そのための戦いだった。

「私はその男に襲われたんだ。あっ、そういうのとは違う意味でっ!」

いつの間にか目を覚ましていたらしいティグルスがオスルを指差して言った。

「レゲル、この男が探してたっていう男なの?」

「はい」

私はやけにおとなしく騎士団の人たちに捕まったオスルを見る。そのどこも見ていないような目が私に向いた。

彼は私が男ではなく、女だということを知っている。

この場で言うつもりだろうか。

まあそうだとしても、私の心の中にあったもやもやは晴れた。後悔はしない。

「レゲル様、騎士団で今回のお話を伺ってもよろしいですか」

「わかりました。そういうことなので、ホテルで待っていてください」

私はティグルスに部屋の鍵を渡して、そのまま騎士団に向かった。

横を歩かされているオスルはずっと黙っている。

「……あなたの隠し事は、あなたにとって一番打撃のあるときまで黙っていましょう」

騎士団に到着したとき、別れる間際にとても小さな声で囁くように言う。

言葉の意味を理解し、振り向いたときにはもうオスルは数歩離れたところに進んでいた


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