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過去5

「なんで私がこんなこと……」

「それは、本当に申し訳なく思っています」

目の前にいるのは、少しくすんだ金髪を後ろで適当にくくった可愛らしい女の子……いや、男の子。

私はカーレル様の息子のティグルスと一緒に、ハセ区の隣、エルセム家が治めるリュシ区にやって来ていた。

数日前からここリュシ区に来て、オスル殿の動きを探っていた。

「話は父上様から聞いてるけど、本当に大丈夫なんだよね?」

今回、ティグルスが一緒にいるのは理由があった。

あの日、カーレル様との話し合いの末、カーレル様の息子のティグルスに女装させて、彼を囮にしようということになったから。

もちろん私は反対した。

カーレル様の、上司の息子を自分の問題に巻き込むのは嫌だったし、何かあったらと思うと怖いから。

本当は私が女装して返り討ちにするという計画だったのに、カーレル様に『さすがにそれはバレます』と言われて、総合的に考えてみてもティグルスの助けを借りる方がいいという結論に至った。

ティグルスの女装は普段からやってるから完璧だし、カーレル様曰く、ある程度どんな少女にでもなりきれるらしい。メイクも自分でやってしまうとか。

いろいろと負けた気分になった。

「かわりに約束守ってよ」

今回の計画が成功したら、私が計画にかかった日数分ティグルスの遊び相手をする、という約束をしていた。

普段は連れていってもらえないようなところに行きたいらしい。どこかはよくわからないけど。

「で、私はなにをすればいい?昨日と同じ?」

ティグルスにはもうすでに女装してもらっていた。

どこからどう見ても違和感が無いのが不思議だ。なんなんだろう、この格差。

ティグルスには、その辺りの路地裏に適当に立っていてもらって、人を釣ってもらっていた。

用のないただの男は適当にあしらって、断りきれない状況だったら私が横から入っていくことになっている。

「毎日変な男に絡まれるばっかりで、レゲルの探してる人は出てこないし。本当に合ってるの?」

一応、このところ毎日オスルは町に出ていっていると精霊から報告を受けているから、そのうち一度くらいは、と思ってはいるんだけどなぁ。

精霊にこの辺り一帯を見ててもらって、私とティグルスのいるところ以外で事が起こっても大丈夫なようにしてるんだけど。

「待っていればそのうち機会がきます。終わったらどこへでもお付き合いしますから」

「まっ、それならいいんだけど」

少しふてくされた様子でティグルスは言う。

ほとんど母親のナルシア様似だけど、どことなくカーレル様の面影もある。とても子供らしくてかわいい仕草だった。

「にしても、私みたいな子供がこういうことしてても買おうって思う人っているんだ……」

まあ確かに、ティグルスに話しかけてくる男は少々変わった性癖の持ち主であるんだろう。

どう見てもティグルスは十代前半にしか見えないから。

だからかえって少し噂になれば、彼が来るかもしれない。

こんな子供が娼婦紛いのことをしているということは、彼にとって絶対許せないことのはずだ。

「ティグルス様のことは絶対に守ります。でも、いざとなったら男であることを言ってしまってください」

彼が殺したいのは娼婦……女だ。男であるティグルスを殺すことには抵抗があるかもしれない。

「レゲルも、無理はするなよ」

少しうつむいてティグルスは言った。





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