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観光 終

「お仕事頑張ってね」

もうすぐ出発する馬車の前で、私とルラはお姉ちゃんと最後にお話ししていた。

これからはしばらくお姉ちゃんをお姉ちゃんって呼べないから、今のうちにお姉ちゃんに甘えておくんだ。

「これ、お姉ちゃんにプレゼント。今日買ったの」

私はお姉ちゃんに雑貨屋さんで買ったプレゼントを渡した。

「わぁ、ありがとう。開けてもいい?」

「うん」

お姉ちゃんは袋を開けて、中から白い花の髪飾りを取り出した。

「これ……髪飾り?」

「うん。お姉ちゃんにきっと似合うと思ったの。ルラと一緒に選んだんだよ」

今のお姉ちゃんには必要のないものかもしれない。でも、私にとってやっぱりお姉ちゃんは女の子で、かわいい格好をしていてほしかった。

「また次にお出かけするときはそれ着けてきてね」

次がいつかはわからないけど、また行くときも私たちはお姉ちゃんとお出かけしたいから。

お姉ちゃんは少し笑いながら髪飾りを頭に着けて言った。

「次はオルトとアレスも一緒に行けるといいね」

みんな一緒。うん、それがいい。そうしたい。

私の横でルラもうんうんとうなずいてる。

「……そろそろ行かなきゃ。みんなによろしくね。明後日は楽しんでくるんだよ」

寂しそうに微笑みながらお姉ちゃんは言う。

「みんなにはこれからも迷惑をかけるかもしれない、あんまり一緒に過ごせない姉だけど、みんなのことは大好きだからね」

最後に私たちの頭に手を乗せて、お姉ちゃんは馬車に乗り込んでいく。

出発した馬車が見えなくなるまで私たちは手を見送った。

手を下ろして、私はルナと目を合わせる。

「……本当にいいの?あんなに行きたくないって言ってたのに」

「うん。やってみないとわからないし、何より、一人じゃないから、ルナと一緒だから大丈夫」

にっこりと笑ってルラは私の手を取った。

「一人で出ていったとき、すごく不安だったの。でもルナが来て、私のことすごいって言ってくれて、本当に嬉しかった。私はいつもルナとお姉ちゃんの後ろに隠れてるんだって思ってたから」

「……だってルラは人のことがわかるもん。私みたいに突っ走っちゃわないで、まず人の気持ちをわかろうとする。私と違って」

私だって人の気持ちを考えない訳じゃない、でもどうしても自分の感情を優先してしまって、迷惑をかけた。

今日のことだって、悪いのはルラだけじゃない。なんにも考えずに自分の思いを優先させてしまった私だって悪いんだ。

「ありがとう。ルラが私の姉妹でいてくれて」

「こちらこそ、ありがとう」

いつも笑い合う時と同じようで、ちょっと違う笑い声。

お姉ちゃんはこうなるってわかってたのかな。

ルラを探していたとき、分かれ道で別れたとき、お姉ちゃんはルラのいる方向と逆に進んでいっていった。

あのとき本当はとっくに見付けていたのかもしれない。

知っていて、私に行かせたのかな。

私は振り返って馬車の向かった方を見た。

届くかどうかわからないけど、私はおもいっきり叫んだ。

「ありがとう!」

それを聞いたルラも、同じように、私に負けないくらい大きな声で叫ぶ。

近くの窓が開いて、うるさいって怒鳴られちゃったけど、すごくいい気分で、ルラと手を繋いでそこから駆け出した。

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