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被害者2

レゲル様がレルチェというドラゴンを飼っているということは竜舎ではとても有名な話だった。

叔父のホーリッツがレゲル様にドラゴンについて教えていると聞いたときは、羨ましくて、妬ましかった。

でもそのお陰で、あの時の恩を返す機会ができた。しっかり案内しないと。

ドラゴンを飼育している竜屋の案内をして、ドラゴンの説明をしていった。

真剣な眼差しで俺が説明したドラゴンを見ている様子は、どこか母親のようだなと思ってしまった。レゲル様は男だから父親だと思うはずなのに、なぜか娘を心配する母親にしか見えなかった。

俺としては、ドラゴンは大きい方がいい。まあこれはほとんどのドラゴン関係者もそう言うんだが。

おそらく、今の竜舎の現状を知っていて、預けたいと思ってもなかなか決断できずにいるんだろう。預けても、世話のできる人員が少ないということに。

だから俺は、一度ドラゴンに乗ってみませんかと、レゲル様に提案した。レゲル様がドラゴンに乗ったことがあるという話は聞いたことがない。きっと乗れば、誰だって大きいドラゴンに憧れる。レゲル様も同じだと思った。

少し迷いはあったけれど、レゲル様は了承してくれた。

俺は自分が世話をしていて、一番信頼している黒いドラゴン、コクを連れてレゲル様のところへ向かった。

竜屋の天井は開くようになっているので、基本的に飛んでそこを出る。

ある種のドラゴンは飛び立つのに助走を必要とするが、このレゲル様のレルチェのようなドクル種のドラゴンは直接真上に飛翔できるのだ。

そして、レゲル様にドラゴンに乗ってもらおうとした。でも、力が強くないのか乗るのに苦労していたので、手を貸して乗ってもらう。

そして飛び立つ時の揺れに慣れていないだろうレゲル様が俺に掴まったとき、その細さに驚いて思わず細いですねと言ってしまった。しまったと思ったけど、言った言葉は取り消すことができない。

いたたまれなくなった俺は、謝罪もそこそこにコクを飛ばさせた。

普通にしていても細いが、こうして密着していると、より細いのがわかる。何かの病気じゃないのかと不安になるくらい細い体だった。

少し頬が火照って、心臓がドキドキしている。まさか憧れの人とはいえ、男相手にこうなるなんて、思ってもいなかった。

ようやく飛行も気持ちも落ち着き、なんとか気楽な声でレゲル様と話をしていた。

風や寒さを全く感じないということは、これはレゲル様の精霊の力か。俺も火精霊に体を温めてもらいはするが、風は防げないから。

ちらっと後ろを見ると、レゲル様はレルチェちゃんと上空からの景色を楽しんでいるようだ。その親子のような様子に、また少し気持ちがぐらついた。

正気になれ、自分。レゲル様は男だ。これはただ、憧れの人だからこうなってるだけだ、と自分に言い聞かせる。

しばらく飛行して、地上に降りた。いつもは高いところの景色を楽しんでいるんだが、今日はそんな余裕がなかった。

先に降りて、レゲル様が降りるのを待った。登るときも危なっかしかったので、降りるのも心配だ。落ちたら折れそうだし。

その不安は的中した。手を滑らせたレゲル様は背中から落ちていく。

咄嗟に手を出して、レゲル様を受け止めた。思っていた以上に軽い体だった。衝撃がほとんどなかったのは、レゲル様の精霊が風で受け止めたからだろう。

問題はこの状況。レゲル様をいわゆるお姫様抱っこしている状況……顔が近い。

後で猛反省したが、俺はその時、レゲル様の顔をまじまじと見てしまった。

男性的ではない、中性的な顔立ち、一瞬状況が呑み込めていなかったらしいレゲル様の顔が赤くなっていくのも見てしまった。

慌てて俺の腕から飛び降りたレゲル様はどこか遠くをしばらく見て、落ち着いたのかお礼を言ってくれた。

この場から一旦離れたいと思った俺は、返事もまともでにきず、コクを竜屋に戻しにいくという口実のもと、その場を離れた。

竜屋にコクを戻して、その巨大な頭を撫でながら、俺はさっきの状況について考えていた。

忘れようにも、絶対に忘れられないだろうあの感覚。

『恋』という単語が頭に浮かび、すぐにそれを頭から追い出した。

レゲル様に、恋。あり得ない。だってレゲル様は男だ。どうしてこんなことを……いくら細くて、女性らしさをちらりと感じさせるとはいえ、男であることなんて誰でも知っていることだと言うのに。

が、そのわけもわからない感覚はずっと俺に付きまとった。

叔父さんの研究室に戻ったときも、それは同じだったが、なんとか平常心を保った。

レゲル様がレルチェちゃんをここに預けたいと言ったとき、思わず任せてください。なんて言ってしまった。

恩返しをしたい、というだけの気持ちではないということはわかっていた。

それでも口をついたその言葉は取り消せなかった。いや、取り消したくなかった、という方が正しいのかもしれない。

次の章?が書ききれていないので、来週は更新できそうにありません( ;∀;)

万一変なところで切れたまま更新を止めたくないっていう個人的な事情です

テストが終われば一段落するので、その時にぽちぽち書いていきます

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