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宰相様のお土産3

「じゃあとりあえず、今のところはどうにもならないんですね」

「まあ、そういうことになりますね。病気になってしまえばもう治せませんから」

まあそのときはその時だ、仕方のないことだろう。

「そういえば、ドラゴンの名前ってどうやって決めてるんですか?」

「名前?親の名前から取ったり、色から取ったりいろいろありますね。適当に付けることもあるようです」

「適当?よくある名前とかですか?」

「ドラゴンは大人になる前に死んでしまうことが多いですから、いちいち名前を考えてしまうとドラゴンに愛着がわきやすくなって死んでしまった時などにより悲しく感じるからだそうです」

「適当でいいんですか……」

「青いドラゴンですしアオとかでいいと思いますが」

私とまったく同じことを……

「適当ですか、道中考えましょうかね」

「深く考えるのはおすすめしませんよ。まあできるだけいい名前にしてあげてください」

彼はそう言って机の上のドラゴンを撫でた。


私は彼に礼を言って、竜舎から出た。

広い道を1人歩いた。精霊もいるが彼らはなにやらお互いに話している。

にしてもどうしようかな、あんまり適当も可哀想だ。

そんなことを考えながら竜舎を出てしばらく歩いてからのことだ。不意に近くの草むらがざわざわと揺れ、そこから狼型の魔物が飛び出してきた。

「こんなところに魔物が……?」

魔物は動物の形をしているが、普通の動物とは違い、知能が高く攻撃的な生き物だ。まあ知能が高いと言っても人間に及ぶほどではないが。

だが今回は妙だ。群れが出てきたのだ。この辺りはドラゴンがたくさんいるので、匂いのわかる魔物がこの辺りにこんなに群れているはずがない。

そんなことを考えている間に囲まれた。

『どうします?』

とりあえず植物精霊と水精霊は外側から、残りは内側から攻撃させる。

そして精霊使である私は、精霊に指示を出しつつ、持っている短剣で応戦した。短剣には火精霊に命じて刃の部分に炎をつけてもらった。

次から次に出てくる魔物を切って刺して倒していく。

制服に血がついてしまったが仕方ない。

「やっ!」

最後の一匹を刺し殺し、短剣を振って血を払い鞘に戻した。

遠くを見ると、誰かがこちらに駆けてきた。竜舎の人間のようだ。確かにここの様子は竜舎の塔からなら見えるだろう。

「レゲル様!ご無事ですかっ!?」

何度か顔を会わせたことのある竜騎士だ。

「ええ、すみませんが何か上から羽織れるものをお貸しいただけますか?この格好では目立ちます」

「えっ、あっ。急ぎなら俺のでもいいですか?」

そう言って彼は羽織っていたマントを渡してくれた。ありがたい。

私はポケットから財布を取り出した。

「マントの代金だと思ってください」

私は上等の服を買っても釣りがくる位の金を彼に渡した。

「これでは貰いすぎです!」

「お釣は飲み代にでもしてください。では仕事がありますのでこれで失礼します」

その時もぞもぞとポケットが動いた。ドラゴンが起きてしまったようだ。というかさっきの戦闘で起きなかったのか?

私はこのドラゴンの鈍感なのか安眠してるのかよくわからない頭をポケット越しに撫でた。

なんとなく精霊達が怒っているような気がした。

彼らには実体がないから撫でてもらえない上、何もしていないドラゴンに腹が立ったのだろう。

気にすると切りがないのでとりあえずドラゴンを傷付けないよう精霊達に釘を刺し、王宮に戻った。


部屋の戻ると、机の上の山積みになっていたはずの書類があと一山もないくらい減っていた。

カーレル様の方を見ると、今も物凄い速さで書類を片付けていた。

普段はあれだが、できる人なんだとこういうときに実感する。

ちなみにドラゴンの名前はレルチェにした。

カーレル様から少しいただいたが、本人は気付いていないだろう。

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