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竜の雛6

ホーリッツの研究室に戻ってくると、ホーリッツはなにやら書類作成の作業をしていた。

邪魔をするのは悪いので、私は机の上にレルチェを出して一緒に遊ぼうとする。でも、先ほどの興奮が覚めていないのか、飛び回って棚の上に乗ったり、また机に戻ったりして一匹で勝手に遊んでいる。

ホーリッツの邪魔をさせないように時々注意しながら、ユアリスが戻ってくるのを待った。

「ただいま戻りました」

その声と共に戻ってきたユアリスは私の正面に座る。

「先ほどはありがとうございます」

「いえ、そんな……レゲル様にドラゴンの良さを知っていただければ十分です」

ユアリスは近寄っていったレルチェの頭を撫でながら言った。

「ところで、レルチェちゃんは今後どのように育てていくおつもりですか?」

「そうですねぇ……」

レルチェを竜舎に預けることはできる。必要な育成のための資金は、カーレル様がほとんど負担してくれるとか。少し申し訳ないけど、元はと言えばカーレル様が私に世話を押し付けてきたようなものなので、それに甘えることにした。

大きさも、さっきドラゴンで飛んだとき、レルチェがとても楽しそうにしていたのを思い出して、一緒に飛べたらいいなと思った。

それに小さく育ったドラゴンは、ドラゴンなのにどこか儚げで、ドラゴンらしくなかった。あれが将来のレルチェの姿と思うことはとてもできそうにない。

「できることなら大きく育って欲しいんですが、竜舎の方にこれ以上負担を掛けるとなると……」

小さい方が世話はしやすいからそれなりの扱いを受けられるだろう。大きく育ててもらうことで、レルチェの世話が雑になってしまう気がした。

「俺がやります。任せてください!」

立ち上がらんばかりの勢いでユアリスは言う。

「責任を持って育てます。どこに出しても恥ずかしくないように!」

どこに出してもって、レルチェが花嫁修業するみたいじゃないか。まあレルチェは女の子だけど。

「嫁に出すわけじゃないだろう。そうだ、上の方に掛け合ってみるか。ボーナスが出るように」

同じ事を思ったんだな、と思いつつ、え?ボーナス?まあ私個人としては渡してあげたいけど、立場的にこれはいいのか?

「本当ですか叔父さん!」

「カーレル様からもそれなりに頼まれてるからな。代わりに、きっちり世話をしろよ。お前の担当のドラゴンの世話もだ」

そっか、カーレル様が手回ししてたのか。でもいいのか?そんなことして。

私が考えている間に、話が二人の間で着々と進んでいく。

ついには専門用語だらけの会話となり、ほとんど付いていけなくなった。

ふっとレルチェと目が合った。そのくりくりっとした目を見ていると、なんとも言えない悲しさが込み上げてきた。

レルチェを竜舎に預けるということは、いつも当たり前にそこにいたレルチェがいなくなってしまう。ということだった。

今までのように毎日、会いたいときに会えるわけではなくなってしまうのだ。心なしか精霊達も少し悲しそうにしているのが見えた。

寂しいと思っているのか、と思ったけど、たぶん違うな。

レルチェがいなくなるのは嬉しいが、それで私が悲しむのが嫌なのだ。彼らはいつでも主人(わたし)が一番だから。





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