竜の雛
闘技会の前は事前書類の処理に追われ、その後は新人の配属についての書類に追われたおかげで、ここ最近なかなかレルチェのお世話をすることができなかった。
レルチェの聞き分けがよくなり、一匹で大人しく宿舎で待つことができるようになったので、火精霊に温度の調整を任せていただけからな。まあ帰ってくると嬉しそうに尻尾を振ってくれるので嫌われてはいないっぽいけど。
書類の処理も少し落ち着いてきたので、今日は早めに帰ってレルチェと遊ぼうとした。紐の引っ張りあいが好きなようなので、帰りに太めの紐をお土産に買って戻る。
そして、今日もまたレルチェは嬉しそうに尻尾を振って迎えてくれる。癒されるな。
レルチェにご飯をあげて、紐を用意し、さあ遊ぼうとした時、私はある違和感を感じた。なんだろう、私はじっとレルチェを観察した。紐を見てキラキラと目を輝かせている姿は前と同じ、でも何かが違う。
紐をレルチェの前に垂らし、それにレルチェが食い付いたとき、私はその違和感の正体に気付いた。
「レルチェ……でっかくなった?」
思わず口に出してしまう。名前を呼ばれていつものように私の方を見るレルチェ、違和感の正体に気付いてからそのいつもの仕草を見ると、明らかにレルチェは大きくなっていた。
もちろん成長は嬉しい。それに気付いた瞬間は嬉しく思ったけど、すぐにあることを思い出した。
大きくなったレルチェはここでは飼っていけない。今の……小型犬くらいの大きさならもちろん飼っていける。でもドラゴンの成長速度はこの雛期を過ぎるとすさまじいものになる。
ドラゴンはここから一年で、育てようによっては人が乗れる大きさに育つ。それ以降は個体差があるが、まだ大きくなることができる。滅多にいないが野生の長寿のドラゴンはとにかく大きいらしい。
「明日、竜舎に行こう……」
遊びはしたけど、結局大きくなったことによる違和感は拭えなかった。




