―相性が悪いようです―
お久しぶりですww
もっくんですww
初めて彼女に出会ったのは、まだ桜が散りきっていない頃。
明るい日差しに照らされた屋上、男友達に無理やり連れてこられた先で出会った。
廊下ですれ違ったり、友達に囲まれているのを見たことはあるがきちんと話したことがなかった。
だから、屋上に来た彼女を見たとき、すごくかわいい子だなと思った。
緊張してるみたいだったから、俺から声をかけた。
その時の彼女の笑った顔を忘れることはない。
驚くほど、綺麗だった。
キーンコーンカーンコーン
「そこまで!裏返したまま前に回せー。」
テスト最終日の最後の科目。
いつも通り俺は全問を解いた。
俺は机に突っ伏し、呟いた。
「やぁーっと終わったー…。」
「お疲れさん。」
前の席の大和が振り返る。
「で?また隠れるのか?そろそろ来るぞ。」
「そのつもりー。」
勉強会の日から二週間。
あれから俺は隆平と会っていない。
というか、避けた。避けまくった。
アイツがこのクラスに来る前にここを出て、トイレやら屋上やらに向かう。
で、あいつが帰ったら戻る。
その繰り返しだ。
そうしてるうちについに大和に問い詰められた。
もともと隠し通せると思ってなかったので俺は正直に白状した。
『キスされた』と。
最初はぐちぐちと言われたが今は隆平から逃げるのに手伝ってくれている。
そして今日も、俺はこっそりと教室を出る。
目立たないように前の扉から出ようとした時、後ろの扉が開いて、隆平が入ってきた。
「椎奈ちゃんいる?」
あっぶねー。
俺はそそくさと教室を出ると、屋上に向かった。
「あいつならさっき出てったけど。」
不知火 大和は東雲 隆平を一瞥するとそう言った。
「ふーん。」
隆平はそっけなくそう言うと、大和の方へ近づいてくる。
「何。」
「不知火ってさー椎奈ちゃんとどういう関係な訳?」
その瞬間、ざわついていたクラスが嘘のように静まり返る。
皆、二人に注目していた。
(修羅場?)(どーなんのこれ?)(椎奈ちゃんを取り合う二人の図)(さすが椎奈ちゃん)
「…どういうって?」
「だから、好きなの?椎奈ちゃんの事。」
(直球!)(さすが隆平!)(ちょっ…すごいことになってね?!)
大和は一度大きくため息をつくと呆れたように言った。
「ちげーし。『ただの』幼馴染。」
「へー。ただの。」
「そ。」
めんどくさい、とでも言いたげに大和は前を向いた。
「…じゃぁさ、椎奈ちゃんが戻ってきたら伝えてくれないかな。『そろそろ返事をくれないかな』って。」
「自分で言えよ。」
「このごろ会えてなくてな。お前から言っといて。その方がいいだろうし。」
(わかってたのか。)
大和はちらっと横目に隆平を見てから再びため息をついた。
「わかった。言っといてやるよ。」
「サンキューな。」
そう言って教室から出ていく後姿を見ながら大和は人知れず呟く。
「面倒な奴に捕まりやがって…」
『ねぇ、大和君。大好きだよ。』
「俺もだよ。」
耳の中に蘇る愛しい者の声。
夏色に染まり始めた空を仰ぎ見て、面倒事を抱える幼馴染を思う。
「お前からもアイツに言ってやれよ。『もういいんだよ』ってさ。」
忍がそうであるように、また大和も違う思いを抱えていた。
大和は、いついかなる時もその幼馴染の抑止力でなければならない。
約束であるのもあるが、なにより彼自身がそういう性分なのだろう。
はぁ、と本日3度目のため息をつくと、机に突っ伏し、呟いた。
「あっちー…」
次回は急展開ですww
お楽しみにm(__)m