渡る世間はエロばかり
この物語には久留宮 凛たんが含まれていますので、閲覧に注意してください。
男が次のページを捲ると物語は恐るべき形で予想外の展開を迎えた。
糊付けの跡と数匹のちゃたて虫を残して、一切のページがなかったのである。
男はため息をつくと、読み終えた証として背表紙に隆介と自分の名前を記入すると、山のように本が積まれた棚に乱雑に投げ入れた。
「王道な展開には飽きたからな、たまには奇想天外な展開を見たいもんだ」
言うと、隆介は立ち上がり、口を拡げて口腔から胃袋を取り出した。
露にされた器官は昨夜食べた餃子におけるニンニクという愛すべき天敵の放つ強烈な臭い。
「今日はブラシで磨くかねぇ」
取り外した胃袋を机に置くと、隆介は立ち上がる。
同時に背後の扉からノックの音が聞こえた。
隆介は笑みを浮かべ、直ぐ様扉に向かうとノックの主を迎え入れる。
「おはよう、裕里。 昨夜はぐっすり眠れた?」
車椅子に座り、左手に点滴を抱える裕里は今にも泣き出しそうな顔で隆介に尋ねる。
「りゅう君、私の腕を知らない? かな」
よくよく見てみれば、裕里の右腕は肘からソレを喪っていた。
隆介は申し訳なさそうな顔をしながら、自身のベッドに転がる裕里の右腕を掴む。
右手は粘り気のある液体が付着しており、隆介はやや恥ずかしそうな顔にて。
「ごめんね、洗ってから返すから許してくれない?」
裕里は小さく頷いた。
見付けた喜びの感情のみが表情を覆っていた為か、怒っているかどうかは定かではない。
しかしそれ以上に隆介は自身にとって神聖な者を汚した事に興奮を覚えており、むしろ拒絶の表情を期待している節も無いとは言えなかった。
目覚めない彼女を弄んだ結果、乙女だと隆介は認識した。
動かない乙女を如何にして汚すかの行程は非常に魅力的であり、次は彼女の点滴に体液を入れたり、口腔に排出物を入れる想像を膨らませていると、下半身も比例して膨らんだ事に今更気がついた。
裕里がそれを直視しているところに笑いを感じ、つい目の前で乙女の右腕をソレに触れさせると、裕里は隆介に笑いかけた。
「……解せん」
隆介は内心ほっとしながらも苦い顔で裕里を見つめていると、裕里の視線はいつの間にか自分の後ろに移動していたことに気がつく。
振り向くと机の前の太陽と月がみえる窓。
裕里は車椅子ごと窓から飛び降りた。
見届けた隆介は扉に視線を移すと、扉に優しくノックした。
一方その壁一枚向こう。
車椅子に座り、自らの左腕の筋繊維を露出させた修道衣を着た幼い少女は、右腕に握る弦楽器の弓でグチグチと曲を奏でる。
目の前では恍惚な顔で自身のソレを上下に擦りあげる青年は左腕にて少女の膝をなで回す。
それをまるで気にも止めずに演奏する少女がフェルマータを奏で終えると、限界を迎えた青年は少女の膝スカートに出し終え、そのまま満足そうに床に座り込んだ。
「すまん、返事が無いから入ってしまった」
少女と青年に割って入った声は隆介のものだった。
少女と青年は隆介に見向きもせず、見つめあっている。
「お互いに潜む妙な依存は滑稽でもあるな。 だけど羨ましくもある」
隆介は笑いながら自身の生爪を窓から放り投げた。
「さて、真希、薫子。 どうやら女王さんが呼んでるみたいよ」
薫子のみ隆介の言葉に反応すると、楽譜代わりの青年の果てたイチモツを蹴りあげ、悶絶する真希を見向きもせずに部屋の開いた窓に駆け寄った。
窓の向こうには、知る筈も無い少女、しかし今の記憶には確実に知っている。と言える妙な感情を抱かせる少女、久留宮が顔を覗かせる。
久留宮の居る場所は空中であったが、よく見れば隆介や薫子の部屋と全く同じ部屋であった。
隆介は薫子を優しく退かせると、久留宮にたずねる。
「はじめまして、久留宮。 真希がいなくなってしまったんだが知らないか?」
久留宮は一礼してスプーンを取り出すと、いつの間にか隆介の手に持つビニール袋にスプーンを突っ込むと、よく練った挽き肉を掬い上げた。
生臭い異臭に隆介は頭を抱えながらもそのスプーンを受け取ると、怪訝な顔でこちらを見詰める薫子の口元に持っていくと、小さな口でそれにしゃぶりついた。
「これ、まさか真希?」
隆介が久留宮にたずねると、久留宮はファミレスのメニュー表を取り出し、隆介の眼前につきだす。
「違うよ、ハンバーグ」
「へぇ、冷凍じゃないのか」
感心する隆介は、挽き肉の入ったビニール袋を綺麗に包装すると、天井に吊るされた裕里にプレゼントした。
あ、胃袋掃除するの忘れた