第5話。王都キャトルセゾン。
王都に到着ですっ。
ジェイドさんの腕の中でうんうんと唸っている私に
カイルさんはクスクスと笑いながら言いました。
「四季の姫。姫はまだ幼いですから、そんなにすぐに
誰かを選ぶ必要はないと思いますよ。
そうですよね?ジェイド隊長?」
その言葉にジェイドさんを見上げると、小さく頷いて、
「ああ。」というお返事が返ってきました。
でも、もしも私が元の年齢に戻ってしまったら
今すぐ決めろと仰られる気がしてなりません・・・。
そんなことを考えていた時、ジェイドさんが言いました。
「ここが王都キャトルセゾンだ。」
ふわぁぁぁ・・・・っ!!
大きなお城が見えますっっ。
本当に外国のお城っていう感じですっっ。
って・・・あれ?
裏に回っちゃうんですか?
どう見ても表の門はあっちですけど・・・?
きょとんとしていたのが分かったのか、
ジェイドさんは私に説明してくださりました。
「まだ四季の姫が降臨されたことは、民は知らされていない。
知っているのは各国の種族の長たち、王家の者、そして
婿候補の者たちだけだ。」
「ひみちゅ?」
コテリと首を傾げてジェイドさんに問いかけると、
何故か目を見開いて私を抱く腕に力が加わりました。
「・・・ああ。正式に姫の降臨を知らせるのは
もう少し先になる。だから裏門から城に向かう。」
そうなのですか。
なんとなくですが理解できました。
今公表するには何か不都合があるのでしょう。
ふむふむ・・・なるほど。
それにしても・・・ジェイドさんの体温って高いです。
なんだかほんわか安心するというか(顔は怖いけど)
無条件で守られてる感じがするというか(顔は怖いけど)
安心感で眠たくなってきます・・・(顔は・・・略)
・・・・・子供の身体ってすぐ・・眠・・く・・・。
そこで私の意識は沈んでいったのでした。
ジェイドは腕の中のまぁかの体重が、
急に自分にすべてかかったことに気づきました。
「・・・姫?」
ジェイドが突然まぁかを呼んだことで、隣にいたカイルも
まぁかの顔を覗き込んでくすっと笑いました。
「ジェイド隊長。姫は眠ってしまわれました。
ふふ。本当に可愛らしいですね。」
カイルの言葉に、ふぅー・・と息を吐き出して
ジェイドは身体の力を抜きました。
「こんなに小さな幼子が四季の姫とはな・・・。
カイルの言うとおり、本当に不憫でならんな。」
「隊長・・・。そうですね。親に甘えたい年頃なのに
知らない世界に1人きりで飛ばされてきて、いきなり
誰かと結婚しろとか、あなたは姫ですって言われても
混乱しますよね・・・。」
カイルは少し潤んだ瞳で、すやすやと眠るまぁかを見て
かわいそうに・・・と言います。
「前の姫は、この世界に来て、ひと月もの間泣き暮らしたと。
しかしどうだろう・・・。この幼子は、気丈にも
一度もそんな素振りすら見せないとは・・・。」
前の四季の姫君が落とされたのは姫が23歳の頃だったという。
一年後、婿候補の中から、姫は数人の相手を選ばれ婚姻された。
オトンヌの王と結ばれ、プランタン、エテ、イベールの
者たちを1人ずつ傍に置かれた。
そうすることで秋の国だけでなく、
全ての国の情勢は保たれたのだ。
「隊長。婿候補にあげられているのが、隊長や俺が
入っていること姫に伝えなくてよかったのですか・・・?
エテからはジェイド隊長とあと2人いましたよね?
プランタンからは俺とあと1人。
これからもどんどん婚姻を結びたいと希望する者が
増えてくるでしょう・・・。」
カイルは静かに言いました。
「・・・混乱させたくなかった。
お前の言う通り、まだ時間はあるのだから。」
ジェイドの言葉にカイルは頷きました。
そして裏門に到着した騎士団は、門を潜ったのでした。
子供ってすぐ疲れて寝ちゃうのですよねw